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VOL.26 MARCH 2005

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[関連施設紹介] 施設運営と収入《その1》

医療法人社団 東北福祉会 介護老人保健施設 せんだんの丘 事務長
大森 俊也

◆今回のテーマ──施設運営と収入(1)

 私たちは,心身の機能が加齢とともに低下しても住み慣れた環境で暮らしたいと願う気持ちを大切にしていきたいと考えています。「介護予防」とか「その人らしい」という介護を受けることが当然であるかのような受け身の自立ではなく,「自分らしい自立をする」ひとりひとりの向上心を「よろこび」や「自信」につなげていきたいと考えています。
 前号までは,せんだんの丘が取り組んできた施設運営の特徴,職員の役割についてお伝えしてまいりましたが,今回からは,運営を支える収入と経営についてふれてまいります。

◆老人保健施設から介護老人保健施設へ

 介護保険制度以前の老人保健施設は,特養ホームの入所待機と病院への社会的入院が長期化してきた現象の解決策として老人保健法(1987年改正)により設置されてきました。病院から家庭に戻るまでの通過型の「中間施設」として機能するよう,モデル事業を経てゴールドプランによる地域保健福祉計画にも盛り込まれ,さらに2000年4月からは,介護保険制度において「介護老人保健施設」として施設入所と居宅サービスの地域拠点としての運営が機能するよう,ショートステイや通所リハビリテーションなども積極的に展開されるようになってきました。

◆施設の運営と収入

 介護保険での施設給付には,介護老人保健施設,指定介護老人福祉施設,指定介護療養型医療施設の3種類があります。これらの施設にはそれぞれに根拠法がありますが,介護保険の制度設計上,施設利用者数は,介護保険料の設定に大きく影響することから介護保険計画に盛り込まれ計画的な数値目標のもとに進められています。また,施設の運営は,人員の配置,施設及び設備,運営に関する基準をクリアすると事業所として都道府県から指定認可を受けることになります。
 介護老人保健施設は,リハビリテーション,看護,介護を中心とした医療ケアと生活サービスとが併せて提供され,利用対象者は,病状が安定期にある要介護者で医学的管理の下に日常生活の自立に向けて要介護状態(入所),要支援状態(居宅サービス)にあることが利用要件となっています。

 介護老人保健施設の事業収入は,要介護度に応じ,適正な利用実績に基づいて90%が報酬として給付されます。また,利用の実績に応じた10%,食材料費,その他必要な費用,差額室料や委託料収入(実習費) なども施設運営の主要な財源(収入)となります。

◆2003年介護報酬改定

 介護保険制度の開始前,介護給付費の行方にさまざまな憶測が飛び交いました。しかし,施設毎の種別?介護度,加算サービスの内容などの考え方(試算)に基づいて介護サービスの提供実態を斟酌(しんしゃく)した報酬単位が設定されました。制度上,介護報酬にかかる単位の改定は,3年毎(医療保険診療報酬改定は2年毎)とされており,2003年の介護報酬の改定では,施設における繰越金の実態に即して4%の減額が実施されたところです。4%というのは,けっして小さな数字ではありません。きわめて粗い計算で100名規模の入所施設で約4億5,100万円となり,減収分は,概ね1,800万円にもなります1)

1) (1単位10円)×(介護度3 1,027単位)×(入所者100人)×(365日)
≒3億7,400万円 A
(基本食事サービス費2,120円)×(100人)×(365日)
≒7,700万円 B (A+B)×4%≒1,800万円

(計算上ですので,職員の減数や利用者の定員超過なども入院退所,次期利用者を迎える利用者の都合による空室期間や外泊も加味しない概数としています)

◆入所事業の充実,居宅サービス事業の拡張の理由

 私たちのせんだんの丘の施設運営のことをしばしば「大学からの支援があるのでしょう,いいですね……」と言われることがあります。もちろん,設立母体が東北福祉大学であり,諸先生方との親交や助言指導を頂戴しているところです。しかし,運営費は,これまでにご紹介してきたスタッフ配置や独自のケアシステム,居宅生活をベースにする訪問リハビリテーションへのアプローチなど医療法人社団として社会還元型の運営をしながら,独立採算での経営を行っているところです。ですから施設の運営上,収入を落ち込ませないことはとても365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@であり,他の法人?施設と同様に変わらぬ努力をしながら,事業収入を伸ばしていくことになります。その理由は,質の高いトータルケア,社会還元型の運営の普遍化とともに介護報酬における健全経営を目指しているからです。換言すると,全職員が一丸となってもてる力量を発揮するためのシステムが,模索しながらできあがりつつあるところですが,すべての職員の雇用条件が同じではないために「人財」の流出を少なくしたいための努力でもあるということです。事業の拡張には,設備投資を伴いますが,採算性を考慮しながら慎重に考えを進めているところです。
 施設の経営財源は,入所事業収入だけでは,数年で経営の硬直化の現象が起こってきます。入所希望者の待機や入所利用者の在宅復帰をサポートする通所リハビリテーションの運営は,個別リハビリの展開を見聞し,体験を共有することにより意欲向上に相乗効果をもたらしますが,同時に通所リハビリテーション事業を複合的に運営することは,経営にもよい効果を産み出してくれます。
 私たちは,せんだんの丘を利用する皆様の暮らしの連続性を大切にしており,通常の暮らしの環境と離れた入所やショート,通所という受け入れるサービスだけでなく訪問看護ステーションも運営しています。家に出向くと少しの工夫や福祉用具を使用することにより介護者の苦労が解消したり,ご本人の自立を高めることができます。
 「よろこび」を「自信」につなげる運営は,さらに前進した経営を求められ,そこに見えてきた課題も多くあります。次回は,この課題と費用についてお話しを進めたいと考えております。

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