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VOL.38 SEPTEMBER 2006

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[公的扶助論?社会保障論]
夏期スクーリングを終えて ?お疲れさまでした?

教授 阿部 裕二

 私にとって夏期の恒例行事になりつつあるスクーリングを,8月1日(火)から5日(土)にかけて行いました。「公的扶助論」と「社会保障論」の2科目です。このスクーリングは,これまた例年通りインターネットによって他会場へ中継(配信)するという方法で行われました。
 スクーリングが終わるたびに,この機関誌『With』に言い訳を書かせていただいていますが,今回もまた言い訳やスクーリングの印象,感想を述べたいと思います。

◆「お疲れさま」でした

 いつも書き出しはこの言葉になってしまいます。「とにかくお疲れさまでした」。天候が若干不順だったとはいえ,暑い中のスクーリングはお互い大変エネルギーがいるものです。短い人で2日間(公的扶助論のみ受講),長い人で5日間(公的扶助論と社会保障論の2科目受講),集中して授業を受け,最後に試験までこなすというハードスケジュールはかなりの厳しさがあったと思います。私自身も日頃の不摂生から,体調不良のままスクーリング期に突入してしまい,理解しやすい充分な講義を実施することができなかったのではないかと心配?反省をしています。

◆事前学習の大事さ

 ところで,スクーリングに参加される方々には,事前に「※教科書をよく読んで出席してください」(『With』35号p.75?76)と指示させていただきました。非常に短い時間で幅広い内容の講義をするために,ある程度の基礎的知識を前提とせざるを得ないためです。このような事前学習がないと,ただでも苦痛な(?)講義が一層苦痛(退屈)な時間となってしまったかもしれません。
 いかなる講義(分野)も一度の受講で理解することは至難の業です。その意味では,事前学習(予習)や事後学習(復習)は欠かせません。もちろん「すべてを事前に理解すること」を期待しているのではなく,骨格程度でよいのです(これも難しいかもしれませんが……)。とはいえ,「教科書自体が少し難しい」というご意見もありますので,教科書の改訂も含めてこちらも改善策を講じていきたいと思います。

◆教科書と資料集の使い方

 今年のスクーリング(2科目)も「講義資料集」を作成して,講義のなかで使用しました。このような「講義資料集」を作成している理由は2点あります。第1は,講義を円滑に進行するためです。事前にどの時限(コマ)で何をやるのかを示すことによって,受講生の方々が自らの学習の位置がわかるのではないかと思ったからです。第2は,私が担当している科目,特に社会保障論はダイナミックな領域のために,制度,政策が頻繁に変化します。したがって,教科書を作成しても作成した瞬間から古くなるのが現状です。そこで最新の制度,政策,データを「講義資料集」のなかで更新しているのです。
 だからといって,教科書はもう必要ないと言っているわけではありません。制度,政策の理念や考え方等は不変的な部分もありますし,その意味では教科書と「講義資料集」は併用?補完し合いながら活用することが肝要なのです。「旧制度」と「新制度」を教科書や「講義資料集」を読み比べることによって,「どこがどのように変わったのか」,そして「将来どのような方向に進むのか」という理解も大事なのです。

◆宝探し?

 「講義資料集」についてもう一言。「講義資料集」には所々に「《チョッと一服》第18回社会福祉士(精神保健福祉士)国家試験問題」(一部第18回以外の問題も使用)を盛り込んでいます。例年この『With』で正解(解答)を示してきましたが,今回はそれをしないことにしました。「社会保障論」「公的扶助論」ともにご自分で調べて確認してください。与えられた正解(解答)のみで確認するより,問題解説を読みながら正解を確認した方が身に付くと考えられるからです。『国家試験解説集』がさまざまな出版社から販売されていますので,容易に確認することができると思いますし,最近はインターネット上で公開もしています。
 なお,「公的扶助論」の《チョッと一服》の問題に,本番の国家試験には出題されて,後日不適切な問題として削除された問題をワザと取り込んでみました。国家試験でもこんなミスを犯すのです。何が不適切だったのか。宝探し?のつもりで見つけてみてください。

◆ミスについて

 「講義資料集」についてまたまた一言。今度は国家試験のミスではなく,「講義資料集」の内容のミスについて訂正させていただきます。誤りがあったのは「公的扶助論講義資料集」の11ページ(3.近年の生活保護の動向)の(9)扶助別受給世帯の部分でした。以下のように訂正してください。

誤 扶助別受給世帯(医療扶助〈87.0%〉?生活扶助〈88.8%〉?以下略)
正 扶助別受給世帯(医療扶助〈88.8%〉?生活扶助〈87.0%〉?以下略)

 その他にも誤りがありましたが,スクーリングの講義の際に訂正していますので,ここでは省略させていただきます。さらに細かな誤りもあるかもしれませんが,ご容赦ください。他人(国家試験)の誤りを指摘している場合ではなく,わが身も再確認しなければならないことを痛感しました。申し訳ありませんでした。

◆学び方

 いつもクドイぐらい書いていますが,最後に「社会保障論」や「公的扶助論」の学び方について再び述べたいと思います(昨年夏期スクーリング後の『With』にも記述しています)。受講生のなかには,この2科目が国家試験の指定科目だから,受験勉強として暗記的に学んでいる方もいるかもしれません。しかし,このような視点では,学びは単なる知識の詰め込み,ひいてはその知識は記憶にだけ止まることになります。これでは,社会保障(論)や公的扶助(論)を学ぶ意味は半減してしまいます。実生活を含めた現場で活かしてこそ意味があるのです。
 そのためにも,「もし自分が高齢になったら」,「病気になったら」,「障害をもったら」,「貧困になったら」あるいは「そのようにならないために」というような自分の生活における具体的な事例のなかで理解していくことが肝要なのです。このような学び方こそが主体的な学び方となりますし,いわゆる福祉の現場のみならず日常生活にも役に立つ「社会保障」と「公的扶助」の学びに通じるのです。
 皆様のご健勝をお祈り申し上げます。

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