学長室の窓

学長コラム:善友(ぜんぬ)

コラム No.12

信頼は最上の親しき仲間である

 

原始仏典『ダンマバダ』第204偈

WHO(世界保健機関)によれば、総人口に占める65歳以上の割合が21%を超えた社会を「超高齢社会」と定義します。そう呼ばれて久しい現代の日本は、さらなる少子高齢化の加速によって、極めて深刻な課題を抱えています。
今、私は縁あって本学の責任ある役職を務めています。そこで平素は教育研究者の立場から、社会保障制度の見直しや地域包括ケアの推進などを各方面で提言し協働しています。しかしながら私たち産官学民がどれほど連携しようとも、孤独が蔓延する人口減少の現代では、社会制度やシステムでは捕捉しきれない“根本的な何か”が欠落しているように感じるときがあります。

それはいったい何でしょうか?

答えはズバリ、人間同士をつなぐ“信頼ある伴走者”です。仏教や禅の世界では、そうした苦悩する人に寄り添う親族や友人のような存在を「善知識」、「善友」と呼びます。友こそ自分に有益な知識を与えてくれるからです。

これは仏教の開祖ゴータマ?ブッダの言葉です。仏教とは人間の苦しみを正面から受け止め、それを乗り越える知恵を説く教えでもあります。しかし、その知恵は専門的な知識と経験に裏打ちされていなければ、活かすことは難しいものです。
あたかも名医が治療法を熟知しているように、成熟しつつある社会には、福祉の学びと友を思う心をもった「伴走者」が誰にも必要なのです。

私はこの東北福祉大学には、単なる一般的な学生生活には終わらない、福祉の心を育む何かがあると信じています。
夜明けのない夜はなく、春の来ない冬はありません。どのような社会課題を抱えた時代であっても、そこに善友が寄り添う限り、安心という光が社会に差し込むことを私は信じてやまないのです。


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