学長室の窓

学長メッセージ:365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@五年度 卒業式 式辞

 2024年3月15日
本日は、総合福祉学部、総合マネジメント学部、教育学部、健康科学部、通信教育部、通学?通信の大学院、すべての卒業いたされる皆さん、ご卒業並びに修了おめでとうございます。 また、これまでご指導いただきました諸先生ならびに職員の方々、さらには大学生活をお支えただきましたご家族、保護者の皆様には、心よりお祝いと感謝を申し上げます。 

この春ご卒業、修了を迎える皆さんにとって、その学生生活は、終始365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@に翻弄され続けた日々でありました。一生に一度のかけがえのない入学式の式典を控えることから始まり、また在学中には慣れない遠隔授業に、部活動の中止や制限、国見祭の取りやめなど、多くの犠牲を余儀なくされ、大切な青春時代の機会を多く奪うことになりました。そうした学生生活に対しまして、学長として心より深くお詫びを申し上げます。

さて、これから希望に胸を膨らませ就職する皆さん、あるいは、より深い学問と技術を求めて大学院など各種学校に進学する皆さん、一つの節目となるこの日を迎え、多くの思い出がよぎっていることと思います。
春風そよぐあのご入学以来、皆さんはどのような学生生活を送ってきたでしょうか。
おそらくは、一生の付き合いとなるであろう大切な友人との出会い、肩を並べて学んだ授業、深夜まで机に向かって励んだ国家資格試験の勉強、血のにじむような厳しい練習を重ねた部活動、高齢者や患者さん、そして子供たちにそっと手を差し伸べたさまざまな施設実習、 先生や友人たちと楽しく学問を深めたゼミ、被災地を訪れ、ともに汗を流したボランティア活動…。こうした本学でのかけがえのない学びと経験が、きっと皆さんのこれからの人生を切り拓いてくれる大きな力となってくれることでしょう。

本学の建学の精神は、そうした人間の生き抜く力を呼び覚ます精神の「行学一如」でありますが、その仏教の教えは本学在学中のみならず、今後の皆さんの一生を支える理念に他なりません。とりわけこれからの時代は、生成AIや国内外の不安定要素に影響を受ける先行き不透明な時代に本格的に入っていくことになります。皆さんにとって、これから折々の人生の選択を迫られる場面に至りましたときには、ぜひとも母校、東北福祉大学の建学の精神「行学一如」を思い起こされ、奮起して風に向き合って邁進していただきたいと思います。
そんなときのヒントとして、このようなお話があることを紹介いたしましょう。それは軽快な随筆でも知られた小説家、幸田文さんにまつわるお話です。ちなみに幸田文さんの父は『五重塔』で知られ、「露伴?漱石?鴎外」と並び称されるあの小説家、幸田露伴です。

その幸田文さんが以前、母親代わりにお孫さんの授業参観に行ったときのことです。国語の時間で、昔話「笠地蔵」の授業中だったそうです。
貧しい老夫婦が笠を作って、お爺さんがそれを売りに出かけましたが、それがさっぱり売れなかったので帰宅の途につきます。
そのうち、次第に雪が降って来て、とある村はずれまでやってくると、そこには六体のお地蔵さまがあり、そのお地蔵さまの頭の上には雪が積もっている。その様子を見たお爺さんは、「おうおう、さぞやお寒いことでしょうに」と、その雪を払いのけて、売れ残った笠をかぶせてあげるわけです。
家に帰って、その話をするとお婆さん、それはいいことをしてくれたと、たいへん喜んでくれます。しかしお金はなし、寒さも厳しいので早く寝ようと蒲団に横になりますが、その深夜、お地蔵さまが笠のお礼に宝物を持って来たという有名なお話です。
ひとしきりストーリーを朗読し終えて先生が、
「あなたがたがお婆さんだったら、どうしますか?」
と質問したそうです。すると、一人の男の子が威勢よく手を挙げて、

「お爺ちゃん、ただで笠をやってどうするんですか。
お金が無くてこまっているんでしょ?生活のことを
考えてもらわなくては家族が困ります!」

と、かくも堂々と言ったというのです。ひょっとしたら母親が父親をやりこめる口調で答えたのかも知れませんが、その場にいた参観者が一同、どっと大笑いをしたそうです。でも幸田さんは、これは決して笑えない今日的な家庭の雰囲気を示唆している意見だと感じたそうです。
この一件、寒そうにしているお地蔵さんにどうしたらよいのか、選択すべき行動を、もしも生成AIに尋ねたとしたら、どのような答えが出てくるでしょうか。
もちろんお地蔵さまは、あくまでも隠喩、メタファーに他なりません。困窮している人間、あるいは動物や寒そうにしている人形、置物だったらどうでしょう。そんなときにも合理的、資産運用的に判断することが優先されるべきなのでしょうか?とりわけ自分自身が窮地に立っているとしたら、なおさら判断は人それぞれかも知れませんが、そこに内面から湧き起こる同情と友愛の念は、常に自分自身からほとばしり、湧き起こるものには違いないわけです。決して人工知能が導き出すことのみが正しくはない可能性のある、ほんの一例です。
思えば、かつて玄奘三蔵が十八年もかけて死の砂漠、タクラマカンを越え、氷のヒマラヤを越えて経典を持ち帰った勇気と挑戦や、あるいは海の向こうに大陸があることを信じて大海原を旅立った歴史の偉人たちなど、人類の歴史のさまざまな出来事は、確率論や合理性、損得などでは決して図れない勇気と知恵の挑戦があってこそ、成し得たものです。そして、いつも乾いた心にやさしい思いやりの心を植えつけてくれるのが人間らしさの特性なのですが、建学の精神には、実にそのような真心に裏付けられた学問と実践であったということを、どうか誇りに思っていていただきたいと存じます。きっと、人生の大事な場面で、正しい答えが導き出されると信じます。
たしかに、世情を見渡せば今、止まらぬ少子高齢社会に地球規模の深刻な環境問題、自然災害、さらには非道なテロや戦争が現実に起きています。あまりにも厳しいこの現実を前に、はたしてこれから世の中はどうなってゆくのだろうと不安な気持ちになるかも知れません。
しかし、不安な時代だからこそ、あえて申し上げましょう。今こそ、東北福祉大学を巣立ちゆく皆さんが活躍する時代なのです。なぜならば、不安と激変する世の中で、常に未来を見つめ、しっかりと変わらずに輝き続けることが出来る普遍の教えが、東北福祉大学の禅の教え、福祉の精神が皆さんにはあるからです。
幼くして東日本大震災を経験され、その後の復興支援にも寄り添い、さらには福祉?教育?心理?医療を学び、しっかりと身につけられた卒業生、修了生の皆さん。どうぞ自信をもって「行学一如」と「自利利他円満」の教えを日本で、世界で実践するときが訪れたのだと鼓舞してください。
われらが東北福祉大学は今も、そしてこれからも皆さんにとって一生涯の母校です。後輩たちとともに、私たち教職員は、いつでも皆さんを暖かくお迎えしたいと思います。

最後に私の好きな言葉を贈ります。それは昨年の春に皆さんと同じように大学を卒業された水泳の池江璃花子さんによるツイッターでの言葉です。

「神様は乗り越えられない試練は与えません。
自分にとって、乗り越えられない壁はないと信じます」

皆さんのさらなるご発展とご活躍、そしてご健康を心から祈念して、以上、学長式辞といたします。

365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@六年三月十五日
東北福祉大学 学長 千葉 公慈

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