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【現場から現場へ】

[OB MESSAGE] 児童福祉の第一線から

社会福祉法人 聖母会  児童養護施設 天使の園 指導部長
渡辺 憲介
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東北福祉大学通信教育部入学の皆さん,ご入学おめでとうございます。
平成14年度より,東北福祉大学に通信教育部ができるとお聞きし,心から喜んでいるOBの一人です。
今年,2月に30年ぶりに大学にまいり大学の施設?設備のすばらしさに,ただ唖然とするばかりでした。
私は,大学卒業と同時に現在の職場であります社会福祉法人 聖母会 児童養護施設「天使の園」に勤務いたしております。皆さんもご承知のように毎日,新聞紙上やテレビ等のマスコミで児童の問題が,ニュースに報道されない日がないくらいに,今子どもたちは地域社会からの脅威にさらされています。児童虐待,不登校,引きこもりなどの問題が毎日ごく当たり前のように報道されています。このような問題は,一般家庭だけに起こっているわけではありません。社会的養護サービスを提供している児童福祉施設でも以前に行われていたことも事実で,私たちと同じ児童福祉に従事している仲間のうちごく一部の心ない職員により児童虐待や子どもの人権を平気で無視したような行為がなされていることに非常に心を痛めております。言うまでもなく,児童福祉施設の主人公は大人の私たち職員ではなく,施設で生活をしている子どもたちなのです。その主人公の子どもたちの意見や人権を無視したような行為をすることは,絶対に許されることではありません。

現在の子どもたちのいろいろな問題発生原因について考えてみますと,家庭の養育機能の変化があげられます。家庭の中での本来的にしなければならない母親の役割や父親の役割など,子どもと親が毎日一緒に生活する家庭の中で母親や父親と子どもたちが心の通った会話やかかわり方ができていないことや母親,父親としての子どもの養育に対して責任を持っていない親が非常に多いことを感じます。勉強がわからなくなると学校の先生の教え方が悪いといいます。私も,地域の中で剣道の指導をしていますが,今の親は少年団に入団する時に「先生,この子は落ち着きがないので剣道で落ち着かせてください」と希望してきます。剣道で落ち着くならば皆が剣道をしたら良いわけですよね。親がしなければならない責任を第三者に押し付けて,についての責任逃れをしている親が非常に多くなってきているということです。
私も何とか30年,児童養護施設で仕事をさせていただいておりますが,本当にいろんな問題行動を持っている子どもたちも,親ではない,私たち職員のかかわり方で大きな気持ちの変化を見せてくれたケースがたくさんあります。しっかりと,時間をかけて,子どもたちと向き合うことの大切さを心底,感じます。
2020年から30年にかけて超高齢社会を迎えますが,その時代に日本の経済を支える最前線にいる大人が今の子どもたちなのです。今の子どもたちに「思いやり」「いたわり」「やさしさ」のある人間として成長するように伝えるには,私たち大人が,きちんと,子どもと真正面から向き合いかかわりあうことが大切なのです。今の子どもたちを「思いやりがあって人をいたわれるやさしさを持った人間」に育てなくては日本の超高齢社会は先が真っ暗に思えてなりません。
そのためにも,私自身がもっともっと,子どもたちとのかかわりを通したなかで専門職員として身に付けておかなければならない知識や技術の必要性を感じています。

通信制の皆さんにはこのような専門的な知識や技術を講義や実践を通して十分に学んでほしいと期待しております。その点では,すばらしい教授スタッフ陣がいる通信教育部です。
また,私たちOBのなかには全国で教育の現場,社会福祉の現場等で活躍している者が数多くいます。皆さんの現場実習での受け入れや,相談などをしていただけるネットワークもありますので,安心して勉学に励んでいただきたいと思っております。

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