With TOP > VOL.30 SEPTEMBER 2005 > 

VOL.30 SEPTEMBER 2005

【学習サポート】

【現場から現場へ】

【11月科目修了試験のご案内】

【秋期スクーリングIV?冬期スクーリングI?IIのご案内】

【通信制大学院コーナー】

【お知らせ】

【卒業と資格?免許状取得のために】

【ひろば】

【学習サポート】

[社会保障論?公的扶助論]
夏期スクーリングを終えて

教授
阿部 裕二

 8月3日(水)から7日(日)にかけて,「公的扶助論」と「社会保障論」のスクーリングを行いました。これらの科目は,昨年に引き続きインターネットによって他会場へ中継(配信)するという方法で行われました。私自身は,スクーリングの回を重ねるにつれて,少しずつ慣れてきた感がありますが,改めて,講義を行う難しさを実感した部分もありました。ここでは,今回のスクーリングの印象,感想を述べていきたいと思います。

◆とにかくお疲れさまでした

 まずはお詫びしたいと思います。今回のインターネットによる中継(配信)に関して,声がしても映像が届かない?乱れるなどの不具合がありました。他の会場で講義を受講された方にとっては,ラジオ放送と同様なかたちになってしまい,長時間の聴取には大きな困難さ(苦痛)を伴ったことと思います。また,仙台会場も同様で,映像の送信が不調のため板書がほとんどできませんでしたので,単調な講義になってしまったのではないかと思っています。申し訳ありませんでした。この場をお借りしてお詫び申し上げます。テクノロジーに依存した人間の限界を感じさせる出来事でした。
 このような状況でしたので,講義を通じてどれだけ理解していただけか,不安な面がありました。しかし,スクーリング修了試験の解答内容をみると,ほとんどの方々がある程度は理解していただいたことがわかりホッとしました。今回の出来事を通じて,自分の講義技術の未熟さを痛感しましたし,どのようにすれば,受講生にわかりやすく情報を伝えることができるかという講義の難しさも,改めて私自身再確認することができました。
 いずれにしましても,短い人で2日間,長い人で連続5日間のスクーリング,本当にお疲れさまでした。

◆熱心さに感心しました

 スクーリングの度に何時も感じるのですが,参加されている受講生の方々は非常に熱心であり,感心するとともに圧倒されます。講義内容に頷かれる方などリアクションも多くあり,講義者としては孤独な授業にならずに済んだのではないかと感謝もしています。また,休憩時間中に質問される方(仙台会場に限られますが)も大勢いらっしゃいました。そのなかには,職場において抱える問題やこれまでの人生経験からの疑問や問題点など幅広い質問が多くありました。できる限りお答えしましたが,私自身不勉強な点もあり十分な対応ができないものもありました。現実の多様性と知識を知恵(現代社会の中で活かす)に変える難しさを痛感しました。

◆事前学習の大切さ

 今回も,教科書を補足し,講義をスムーズに進めるために「公的扶助論講義資料集」と「社会保障論講義資料集」をそれぞれ作成し配布しました。スクーリングでは,主にこれら「講義資料集」に沿って講義をしていきましたが,もちろんそれだけで内容が理解できるものではありません。「講義資料集」はあくまでも各教科の「ポイント」と「講義の流れ」をまとめただけですから,大事なことは教科書等を読むという「事前学習」だったのです。
 スクーリングを受講するに当たって,「教科書をよく読んできてください」と明記しました。いかがだったでしょうか。事前学習は十分でしたでしょうか。受講生の多くの方々は,教科書にアンダーラインやマーカーを引いてあり,事前学習のあとがみられました。うれしくもあり,期待に応えられる講義をしなければならないというプレッシャーも同時にありました。いずれの科目も同様であると思いますが,教科書が講義の柱になっていますので,スクーリングに参加される際には,教科書を読むなどの事前学習が肝要となります。

◆スクーリング修了試験について

 ここでスクーリング修了試験について一言。大方の受講生の方は,題意を理解して解答されていました。しかし,中には勘違い(?)されている方もいらっしゃいました。
 たとえば,今回の修了試験の中に「介護保険の基本的な考え方とそれらが抱える諸問題」に関する設問がありましたが,基本的考え方には触れず,介護保険の問題点を書き連ねていた方が少なからずおりました。これでは,「題意把握が充分でない」という評価にならざるをえません。この点に関しては,科目修了試験についても共通にいえることです(2題選択するところを1題しか選択されない例も見られます)。当然のことですが,何が問われているのかという題意の把握が,キチンと解答するための前提となるのです。

◆講義資料集の補足 ─「チョッと一服」の解答です

 さて,「各講義資料集」には社会福祉士?精神保健福祉士の国家試験の過去問の一部を「チョッと一服」として盛り込みました。ここでは念のため解答を示しておきたいと思います。

公的扶助論
問題番号 正 解
1 4
2 3
3 4
4 3
5 1
6 1
7 1
8 3
社会保障論
問題番号 正 解
1 3
2 1
3 3
4 2および5
5 2
6 2
7 4
8 3
9 5

 なお,それぞれの解説については,各出版社から市販されている『国家試験解説集』で確認してください。(社会保障論の問題番号4は解答が2つあります〈ひょっとすると市販の『国家試験解説集』の中には解答を1つとしているところがあるかもしれませんが……〉が,国家試験でもこのような問題が出題されるのです。なぜ解答が2つの可能性があるのかについても,各人で調べ確認してください。面白いですよ。)

◆社会保障(論)や公的扶助(論)を効果的に学習するために

 ところで,皆さんは社会保障や公的扶助についてどのような印象をもっていますか(いましたか)。「範囲が広くて難しそう」「複雑でわかりにくい」「できれば避けて通りたい」等などの声が聞こえそうです。確かに社会保障などは範囲が広く複雑な仕組みとなっていますが,社会保障(その一分野に公的扶助が含まれますが)ほど私たちの生活に密着した,あるいは生活の基盤となっている仕組みはないでしょう。
 私たちの生活には個人的な努力では防ぐことのできない様々な危険が潜んでします。その数多くの危険の中でも,老齢や疾病,障害,失業,貧困,死亡などの危険によって,「国民の生活の安定が損なわれた場合(あるいは損なわれないようにするために),国民に健やかで安心できる生活を保障することを目的として,公的責任で生活を支える給付を行う」仕組みが社会保障(あるいはその一部としての公的扶助)といえるのです。これらのことは,講義を通じて少しは理解していただけたのではないかと思います。
 このように理解すると,社会保障(論)や公的扶助(論)を「福祉関連の国家試験の科目だから単に制度を丸暗記的に勉強する」という姿勢だけでは学ぶ意味とその効果は半減します。「もし自分が高齢になったら」,「病気になったら」,「障害をもったら」,「貧困になったら」あるいは「そのようにならないために」というような具体的なイメージのなかで理解していくことが肝要です。ある意味では,自分自身の生活設計のなかでそれぞれを位置づけながら学習することが社会保障(論)?公的扶助(論)を理解する近道となるのです。
 皆さんお一人おひとりの目標が叶えられますように。

1つ前のページへこのページの先頭へ