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VOL.30 SEPTEMBER 2005

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[関連施設紹介]
施設運営と介護費用《その1》

医療法人社団 東北福祉会 せんだんの丘 事務長
大森 俊也

 前回まで,施設運営と収入についての関係について,せんだんの丘の特徴についてお話してきました。今回は,介護報酬と介護コストとの関係について考えてみたいと思います。

 私たちは,日本という国に生まれ日本国憲法のもとで生活をしています。そして国民の権利と義務のもとに社会保障のさまざまな制度があり,介護保険制度は,その一つとして機能しています。生まれながらに障がいを克服しなければならない人,突然の障がいや予期された高齢期に障がいを克服しなければならない人など「介護」は,乳幼児から高齢者に至るまでさまざまなステージに起こりうる現象です。最近では,「介護」に介護犬や介護ロボットなども登場しつつありますが,入浴や排泄などの介護には,やはり家族や介護を業とする職員がかかわることを考えると介護は「人」によって支えられています。

◆介護サービスにかかる費用

 介護保険制度での費用のほとんどは,利用者の自己選択?自己決定にもとづいた契約による具体的なサービス提供にあてられていきます。介護報酬は,(少々粗い表現ですが)「適正な介護サービス提供への実績対価」として事業者が受ける(権利)もので,満足度の高い介護サービスとして適切な介護サービスを提供する義務が生じるのは当然のことです。そのサービスの質は,市場原理に委ねられており,サービスに対して一層の満足度が高められるようケアプランの作成など様々な仕組みが創られ,そこにも費用が発生しています。また,サービスの行き届かない点や万一の不手際が苦情となるなど利用者にとって不利益のないような苦情処理,第三者機関からの評価や適切な情報提供に対しての事業者の情報開示など介護保険を支えるシステムとして機能するなかにも費用が発生しています。

◆介護事業者の採算性

 介護保険給付は,「介護」にかかる費用としての給付ですが,介護事業者の採算性に対して介護報酬が設定されています。介護コストは,同じ介護度の利用者に対して一律に同様のコストがかかるのかというと利用者のニーズによってコスト差があると考えるべきでしょう。介護サービスの提供は,自立できていることへのサービス過剰提供を避け,サービス提供の量とサービス提供の質を明確に評価する必要があるのではないでしょうか。
 また,介護事業者の採算性に基づく報酬設定は,介護サービスの利用者数が増加することにより,スケールメリットが働きますから,事業者の規模によってその差が大きくなります。サービス提供の利益効果を事業所に向けることと介護保険の総費用を低減する経済効果を追求することが365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@な意味を持つことになります(矛盾する二面性の両立)。

◆介護報酬とケアマネジメント

 ケアマネジメントには,2つの脈絡があると考えます。一つには,私たちは,QOLやQOCの向上とよく言いますが,豊かに暮らすこととは,ご自身の心身の機能を精一杯使うことが大前提にあり,自分で努力しなければなりません。自助努力してもなおできないところに「介護保障」されるべきであり,マネジメントによって明確にされる必然性があります。もう一つには,ケアマネジメントは,パースンセンタードケア(その人らしさではなく,「その人中心」のという意)に向けて取り組むものであり,制度で補足できないことにアプローチするということも含まれるのです。つまり,ケアマネジャーには,地域支援者などインフォーマルな資源を活用することと同時に「だったらいいのになぁ」という資源を開発するアドボケーターとして,ソーシャルワーカーの役割を担う必要があるということです。
 さまざまな人(専門職者)がかかわるからこそ,しっかりとした利用者のケアストーリーが必要であり,アセスメントからケアプランへのベクトルを明確にする必要があります。
 「介護」の具体的内容や程度,その質や量などを客観的に推し量り,しっかりとしたケアマネジメントができてこそ,本来の介護コストが明確にされてくるのではないでしょうか。

◆介護コストに求められるもの

 平成17年9月7日付の関連通知文書によって10月1日から(18年4月の改訂を待たず)施設介護報酬が改訂されます。これは,居宅生活者との給付の不均衡是正を目的とするもので滞在費(室料と光熱水費の相当額)と食費(基本食事サービス費更改に伴う)が利用者負担になります。
 施設は,給与体系に年功評価を採る熟練施設,建設費償還額の多い施設,小規模生活単位の給付適用外のユニット型施設,人的資源の増員によりQOLやQOCの向上に努める施設など様々な運営理念や条件下で経営されています。介護報酬は,これまでの包括給付に対して介護コストの特定に一歩前進したことが伺えます。しかし,費用対効果は,介護コストに評価報酬が反映してこそ,本当の質の向上が追究されるのではないでしょうか。
 次回は,介護費用のバランス&コントロールについて2005年10月の介護報酬改定等に関連して深めてまいります。

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