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【現場から現場へ】

[OB MESSAGE] 市役所職員として福祉に携わる

茅野市役所 保険課 医療給付係
牛山 俊夫
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●卒業して

 昭和50年に東北福祉大学を卒業して,自分の地元である長野県茅野市役所(人口5万6千人程度の小さな市)に就職をしました。配属先は福祉事務所で担当は市民からの生活相談や課題に対して,福祉六法にもとづいて対応していくケースワーカーでありました。当時は,福祉を学校で学んできた人は少なく,配属されてから,研修に行き資格を得ている状況でした。しかし,そんな中で先輩方は,研修で学んだこと,市役所での長年の経験や人間関係を生かし相談業務を行っていました。そのような先輩方と意見交換や指導を受けて育てていただきました。このとき学んだことは,まず「自分で見ること」,「先入観をもたずに自分で感じること」でした。

●特別養護老人ホームをたちあげて

 平成4年4月に市立の特別養護老人ホーム「ふれあいの里」(定員70床〔痴呆10床〕ショート20床)が開所することになり,この主任生活指導員として勤務することとなりました。開所に当たり介護担当職員を募集したところ,ほとんど経験のない方々が集まり,これで人の命を預かれるのか大変不安で研修を特別養護老人ホームの他に老人保健施設へお願いし3交代勤務で研修を受けていただきました。老人保健施設の場合は,リハビリの基本を学ぶには適していたと思います。
 介護担当者の研修は,このような形で行っていましたが,指導員の研修は全くすることができず,利用者の日課の設定や受け入れの日程,職員の勤務時間設定,勤務割りづくりと介護用品の選定で日が過ぎてしまいました。それでも4月10日からは利用者の受け入れをはじめ,満床にするのに4ヶ月をかけ利用者や職員に急激な負担がないようにしました。
 また,この間に,デイサービスも立ち上げなければならないため,デイサービスについては,臨時職員を採用し入所部門になるべく負担がないよう配慮し,当初から施設の評価基準に基づく離床や食事時間帯等に対応するためできるだけ直接の介護以外は業者委託を行い,おむつ?寝具類はリース,食事作りも専門業者委託という形をとり,夜間の宿直についても事務部門の負担軽減のため委託としました。
 当時としては,できるだけの好条件でスタートできたと思いますが,やはり,介護の質の向上が一番難しく頭をひねったところであります。このために班編制をして,自分たちで研修したい施設を選んでもらい,そこに研修に行っていただいたりもしました。また,逆に実習や研修生を受け入れ共に考える機会を作ることも行ったりしました。介護担当者には,できるだけ取れる資格は取っておくよう指導し今は全員が有資格者となっています。このとき感じたことは「良いと思われることはやってみる,やれるよう考える」でした。

●市役所に戻されて

 市役所職員の定めで人事異動があり,8年ぶりで市役所に戻ってきました。この間に新しい職員がかなり採用になっており,知らない顔がいっぱいいました。市役所も建て直されていたため,新入職員のような気持ちで電話の扱いも苦慮したところでありました。
 配属先は,保険課医療給付係(国民健康保険?老人保健?福祉医療)でした。このとき,茅野市では,「茅野市の21世紀の福祉を作る会」が発足し,実践する提言集団として民間主導で自分たちの住むまちづくりを自分たちで行い,行政はできることを応援するという体制になってきていました。この中で約4年間もまれながら生まれてきた地域福祉計画(福祉21ビーナスプラン)は行政にとっては,大変な転換を迫られるものであります。

 基本理念

  1. 一人ひとりが主体となり「共に生きる」ことができるまち
  2. 生涯にわたって健やかに,安心して暮らせるまち
  3. ふれあい,学びあい,支えあいのあふれるまち
  4. すべての人にとって豊かで快適に生活することができるまち

 より身近な地域で保健福祉サービスを受けることができるよう暮らしの範囲を段階的に分け保健福祉サービスもそれらの階層にあわせて体系化するものでありました。つまり最小単位は集落,隣近所の支えあいから広域圏までの階層の中でサービスを体系化するものです。この実践のため市は中学校区単位程度に1ヶ所の保健福祉サービスセンターを設置しそこで相談からサービスの提供まで行うものであり,スタッフは,ケースワーカー,ケアマネージャー,保健師,看護師,ホームヘルパー等であり,併設で診療施設やデイサービス施設職員も市職員から民間職員まで一緒に働いています。
 まだ始まって2年目であり今後への課題も多いですが,この保健福祉サービスセンターを中心とする地域(エリア構想)単位での福祉の向上が図れることを信じています。私の立場では,このエリアを利用して国民健康の保健事業であるヘルスアップモデル事業(厚生労働省の指定)を行い,保健師活動がより活発なものになればと考えています。

●勝手に思うこと

 市職員は,辞令がでれば,人事異動で思ってもいない職場に行く可能性もあります。しかし,その職場の中で自分ができること,自分でなければできないことが,何か必ずあると信じて仕事をしています。この文を書きながら,少し前のことを振り返って見ることができ,何となく懐かしい思いがしています。一生懸命,勉強?仕事をしている皆さんに,こんな仲間もいることを知っていただけらと思います。


*福祉六法
生活保護法,児童福祉法,身体障害者福祉法,老人福祉法,知的障害者福祉法,母子及び寡婦福祉法の6つの法律をいう。前者3つは第2次世界大戦直後に制定されたもので「福祉三法」とよばれている。また,福祉六法と社会福祉法(旧?社会福祉事業法),社会福祉?医療事業団法が1990年6月に改正されたことを「福祉八法の改正」とよぶ。

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