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VOL.28 JUNE 2005

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[関連施設紹介] 施設運営と収入《その3》

医療法人社団 東北福祉会 せんだんの丘 事務長
大森 俊也

◆今回のテーマ──施設運営と収入(3)

 前回に続いて,運営と費用について説明してまいります。はじめに,「よろこび」を「自信」につなげる運営についての3つめを紹介いたします。

●生活をベースにした取組み3
 歯科領域では,8020運動(80歳にして20本以上の自分の歯を保ち,生涯を通じ健康で幸せな日常生活を送ることを目指す)がよく知られています。しかし,高齢期の口腔(こうくう)ケアは,介護が必要な状態になると行われない状況が現実で,食生活はもちろん健康への影響も大きくなるといわれています。
 「せんだんの丘」に口腔ケア室が設置された理由には,「いくつになっても沢庵漬けをパリパリたべられる」という活力の根源が食にあり,生きる意欲を強め,健康増進の第一歩として口腔内の条件整備が大切であるという点に着目したことによります。口腔ケア室や歯科診療台の設置により水曜日と金曜日の午後に歯科診療を受けることができます。開設当初から歯科衛生士を採用しており,診療の時間帯以外は,曜日を決めてユニットの中でブラッシンング指導や介助にあたっています。「せんだんの丘」が目指す生活リハビリの観点において,日常のケアとリハビリテーションの両領域にかかわる365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@な役割を担っています。
 口腔ケアの実践からさまざまなことがわかってきました。例えば,毎食後のブラッシングは,口腔内残渣物の除去から雑菌繁殖や口臭を抑えるだけでなく,口腔内乾燥の改善や経口摂取への可能性を大きくしています。呼吸器系の感染性疾患の罹患者がきわめて少なく推移し,舌(ぜつ)の動きをアセスメントすることから咀嚼(そしゃく),喉越(のどご)しの良い食事の検討をするまでに至っています。
 歯科衛生士は,介護保険施設の人員配置基準にその定めはなく,ケアワーカーの位置づけとなっています。しかしながら,歯科衛生士の採用は,疾病の予防や介護の重篤化に文字通り歯止めをかける「予防」の重責を担っており,実践から導かれている数多くの事実が評価されるよう願うところです。このような歯科衛生士の役割は,まだまだ全国的にも先駆的な取組みであり,感性福祉研究所の先生方の力をお借りしながら積極的に研究発表/報告をしているところです。また,「せんだんの丘」では,歯科衛生士学院等の実習受入れをおこない,口腔ケアの365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@性を広く啓発する人材育成にも努めているところです。

◆施設運営と収入から(1)

 介護保険施設は,介護報酬を介護度と利用日数に応じて収入しますが,厳密に言えば,一人ひとりの介護の内容や展開は異なり,介護費用も必然的に異なるはずです。平成14年度以降では,小規模生活単位(ユニット型)の施設建設への(政策的な)誘導から利用者が居住費用を負担することになり,給付の「介護」への意味づけが少し明確になりました(「介護」に要した費用に依然として,施設建設費等の初期投資〔イニシャルコスト〕分の償還費用が包括給付されていますが……)。
 また,現時点でのケアプランの導入は,施設運営の歴史的過程からするとまだまだ「集団ケア=効率性」の中で立案,展開するという状況にあると言えますし,介護保険民間サービス事業所の参入は,介護を市場化しましたが,被保険者がサービスの質をどのように判断(選択/決定)するかは,ケアマネジメント機能の充実,介護(環境やサービス) 資源の充実やさまざまなシステムの整備を待つ状況にあります。
 前号の「取組み1」(「よろこび」から「自信」へという達成感が利用者ご本人だけでなく,ケアに対する職員の感性をも豊かにする)スーパーへの買出しから調理実践の事例,「取組み2」(「楽しみたい」という気持ちが,行為や行動を生み出し「自信を引き出す」という感性によるインセンティブ)園芸作業の事例,今回紹介した「取組み3」の事例などもすべてが環境,人,時間の相互作用のダイナミズムによって「真のその人らしさ」に近づけられる取組みと考えています。これらの取組みは,けっして特異な取組みではなく,介護保険が給付に対して期待している当然の施設機能ということができます。
 介護保険サービス事業は,公費を収入することから認可(基準該当)により公益性が担保されており,利用者の満足度は,大切な指標とされなければなりません。しかし,サービス提供の各種事業や施設の運営理念,職員の資質や経験などによって利用者の満足度には,少なからず差異があることは,否めない事実です。「考えが甘い」とお叱りを頂戴するかもしれませんが,当然のことながら,経営的な視点から「かかわり方」に対しての実践評価(介護報酬における付加価値評価)が報酬認定されることを強く感じるところです。現行の介護報酬制度では,活発な援助活動であってもそうではなくても質的な評価軸がない提供の事実に対しての報酬となっています。良質なかかわりの事例を数多く作り,モデル展開し,さまざまな取組みをおこなうことは,施設やスタッフの成長や実力に見合う根拠を裏付け(レベルアップ)することになり,モチベーションを高揚することになるものと考えます。
 介護保険施設が果たすべき機能として,要介護状態の軽減,自助能力の回復や安定,自立に向けた「せんだんの丘」の取組みをご紹介してきましたが,ご本人が望む生活を作りあげるようこれからも日々努力してまいります。
 次号は,収入の減少をどのようにして抑えていくかを「施設運営と収入から(2)」としてつづけてまいります。

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