【現場から現場へ】
[OB MESSAGE] 高齢者ケアのニューウェーブ
社会福祉法人長岡福祉協会 高齢者総合ケアセンターこぶし園 総合施設長
小山 剛
私の職場
私は昭和52年に卒業し,知的障害児施設,重症心身障害児施設に勤務後,昭和57年から現在の高齢者施設に勤務しています。
私の施設では現在提供サービスが44事業あり,そのほとんどが在宅サービスです。職員数は現在250人ですが,関連法人を含めると1800人を超える大集団で,そのうちソーシャルワーカー職は75人おり,単独組織として毎週日曜日に無料の相談室を開催したり講演会を開いたりしている協議会も結成し,このなかに多くの東北福祉大学卒業生が活躍しています。
日本型福祉の欠点
さて,担当している高齢者サービスについてですが,現在「サポートセンター構想」を提唱し,介護者に負担をかけずに暮らしなれた地域社会で生活を支えるシステムを作っています。
利用者のみならずすべての人々の願いは施設生活ではなく,住み慣れたそして築き上げてきた今の暮らしを継続することにあります。しかし,これを支えるサービスがないために,利用者?家族とも仕方のない選択として施設を利用しているのが現状です。「サポートセンター構想」はこれを変えたいと思っています。これは,「あなたはどうしますか」と尋ねられた時の答えと同じではありませんか?
では,どうして在宅生活を支えられないのかといいますと,日本の福祉サービスの原点が大家族制度からはみ出した部分のみを救済すること,そして家族を側面的に支える程度であったからです。
しかし現代社会は職場の分散や高学歴化のなかで,核家族化や女性の社会進出が進み,常時の介護を提供できる家族力がなくなっています。
この現実に対して従前の救済やお手伝いレベルのサービスしか提供できていないのですから,結果家庭では無理だから施設への入所を選択しなければならず,それも望まない選択を繰り返しています。
施設は生活の場?
施設を「生活の場」とか「終の棲家」と呼ぶ人たちがいますが,とんでもない間違いで,提供されているのは寝台とそのまわりのわずかなスペース,そして4人部屋という雑居部屋だけです。あなたはその中でプライバシーを保った個人の生活を行なうことができますか? またあなたはそれを望みますか? 聞かれると誰もがNoと答えることでしょう。また,最近の施設は1ベットあたり1500万?2000万もの高額が投資されているのにもかかわらず,提供しているのは寝台とわずかなスペースの雑居部屋です。この理由はホテルのような広いエントランス,大食堂に大ホール,さらには利用者の居室よりはるかに広い園長室や応接室といった共用部分にかかっているからで,利用者の生活を無視した本末転倒の結果と言わざるをえません。
サポートセンターとは
私が現在展開しているサポートセンターは,この仕組みを改善するためのもので,施設を解体して機能を地域分散する仕組みです。
そしてこのきっかけとなったのはアメリカのマネージドケアプログラムにあるPACE(the program of all-inclusive care for the elderly)が目指している「できるかぎり病院?施設への入所をしないで在宅生活を続ける」ためにさまざまな在宅サービスを組み合わせて提供することでしたし,そのクオリティを引き上げるきっかけは,現在相互交流をしているスウェーデンのニーブロコミューンで見た施設を廃止して,住みやすい住環境の提供と24時間365日継続されるケアサービスでした。
現在コンビニ型とネットワーク型を展開し,さらに民間との共同によるシステムを開発しているところですが,近い将来必ず「自宅でもない施設でもない,地域社会で暮らす」システムとしてのサポートセンターが生活支援の中核になるものと信じています。通信で学んでいる皆さんも,既存のシステムだけではなく,自分自身を利用者としてサービスを見ると,クリエイティブな仕事ができて楽しいものだと思います。
サポートセンター例
(1) バリアフリーアパート
(2) 通所介護(7:30?18:30 365日)
(3) 訪問介護(24時間365日)
(4) 訪問看護(24時間365日)
(5) 配食サービス(3食365日)
(6) 痴呆対応型共同生活介護
(7) ケアプランセンター
以上の7種類のサービスがまとまって地域に点在するしくみで,既存の施設が提供しているサービスと同じことが地域社会の中で提供することができます。