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VOL.25 JANUARY 2005

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[家族心理学] スクーリングを終えて

教授
西野 美佐子

◆はじめに──スクーリングで意図したこと

 今年の家族心理学のスクーリングは,木枯らしの吹く11月12日の5時10分から8時過ぎまでの夜間の講義から始まりました。翌日13日午前2コマと14日の午前2コマの計6コマの講義はいかがだったでしょうか。
 3日間のスクーリングに参加してくださる学生さんにどんな講義をするか,事前準備段階で思案しました。もちろん家族心理学は,私にとっては2度目のスクーリング講義だったので,昨年どおり行えばそれで済むわけですが,通信教育部からの「課題レポートを書きやすいように配慮した講義にしてほしい」という要請と講義時間数との兼ね合いの中で,講義内容に族心理学の基礎理論と家族の問題を家族心理学の理論的枠組で理解できるようになるために必要な知識を入れることにしました。
 これまでのレポート添削をしていて,「事例を挙げて考察する」というレポート課題で事例をどのように扱うかとまどっているようでしたので,参考にしていただければと思い,家族病理の兆候を帯びた事例を紹介することにしましたが,これは今年の新しい試みでした。講義の反省点としては,基礎的な概念のすべてについてはわかりやすい具体例を取り上げることができなかったこと,さらに家族の問題事例への介入方法やカウンセリングについても講義で触れておくべきだったということです。
 反省するところは多々ありますが,おかげさまでスクーリングを終えてから一挙に40?50通のレポートが殺到し,添削に負われている昨今です。そして,家族病理についてのレポートにあげられている事例の記述を読んで,家族理解を深められていることが随所に感じられ,心打たれながら添削指導をしています。

◆レポートを読む楽しみ

 レポート読む際に楽しみなことは,レポート作成者の意見が出ている箇所に出会い,「そう,そのとおり」「同感。同感」「なるほど,そういう見方もあるのだ」「面白い。独創的な解釈ね」というふうに,確認作業をしたり,新しい見方?考え方に出会うことです。若い人は若い人らしく,経験をつんだ方はそれなりのご意見を示してくれます。このように,課題に対する基礎的知識を踏まえた上で,いかに咀嚼(そしゃく)しているかが文面から感じられるレポートに出会うとうれしい気持ちになります。添削を通して,レポート提出者と討論している感じを持ちます。
 また,これは合格にしてもいいのだけれどと迷いながら,あえて「再提出」にすることもあります。それは,その人は,十分このレポート以上の良いレポートを書ける人だと期待しているからです。がっかりせず,もう一度指摘された箇所の文献を読み直し,基礎知識を復習したり,違う角度から考察をし直したりなど書き直しをしてださい。これまでのケースでは,次に出てくるレポートは驚くほど整理され良くなっています。

◆スクーリングを終えたら早目にノート作りを!

 配布された資料を見ながら,講義を聴き納得したつもりでも,正確な知識を身につけるためにもう一度ノート作りをすることをお勧めします。わかったつもりでいることでも,一箇所くらいはもっと詳細に知りたいと思うことは必ずあるものです。講義で参考書としてご紹介しなかった本は,配布してあるテキストの各章の参考文献に書き出されている本を参考にしています。ですから,もっと詳しく知りたいという方は,その参考書にあたりノート作りをしながら読むことです。今では,パソコンなどをノート代わりに利用している方も多いでしょうが,その日勉強した要約をパソコンに記録しておくのはいいでしょうが,その前に,まずは自由に,自分に合うラフなスタイルで自らの手で書きだすことです。
 少し大きめのノートを準備し,日付と見出し(大抵は本の題名と章を書き出す)を書き,その後は自由に基礎的な概念の定義を書き出したり,内容の関連を図示してみたり,大事な項目の要約を自分なりにまとめたり,それに対する自分の意見を赤ペンで書いたり,頭に叩き込むつもりで書き出してみることです。そうするうちに正確な知識を身につけることができるでしょう。情報過多の現代,多くのあいまいな情報よりも,その時点で,少しでも正確な知識を毎日少しずつでも身につけていくことはとても大切なことです。
 “塵も積もれば,山となる”です。

◆家族問題をもっと深く理解するために

 最近は,家族問題の事例を掲載された出版物も多く出回るようになり,そうした事例に出会う機会も容易になりました。倫理問題などで,個人が特定されないように加工されておりますので,安心して出典さえ明記すれば引用できます。そうした家族問題について家族心理学的アプローチで,家族内力動を捉え,家族の心理構造を捉え直してみるといいでしょう。
 読む際に,事例の客観的な事実とその事例に対する著者の解釈を区別して読み進めていくことです。事実に対する解釈は,立場が異なると変わりうる場合があるからです。自分だったらどのように解釈するか,書き出してみてください。そうした上で自分の意見と著者の解釈と比較してみるといいでしょう。
 家族問題を理解する上で,個人や家族的文脈にさらに加えてほしい視点としては,家族の置かれた地理的?歴史的?社会経済的視点です。個人や家族的文脈は,家族を見る微視的視点とすると,地理的?歴史的視点もしくは社会経済的視点は,家族をみる巨視的視点ということになります。家族力動を理解するには,微視的視点と巨視的視点を両方加味して初めて,より深く個人や家族を理解することができるでしょう。

◆生活を科学化することへの挑戦

 家族心理学の講義を聞きながら,学生自身の家族や,自分がさまざまな場で対面している家族に思いをはせながら,講義の内容と重ね合わせて聞いてくださった方も多いようです。今,社会問題となっている児童虐待やACなどへの関心の高さも伺うことができました。また,仕事の立場から家族への援助方法について知りたいという希望も多く出されておりました。家族形態の多様化が進行する中で,典型パターンと異なる家族の発達段階についての研究情報を知りたいというご意見もありました。
 スクーリングに参加した学生の方々の講義の感想から,皆さんの関心や私と皆さんの双方に課せられた今後の課題が見えてきました。
 今学生の皆さんが家庭?職場?地域等で直面している問題について考えることは,まさに「生活を科学化する」ことそのものです。本学が追求している実践科学への第一歩だと思います。カリキュラムの中に発展科目として「家族心理学演習」などの科目があれば,事例の解釈や援助の実際を検討しあうこともでき,私にとっても援助スキルの実践研究の一端を担わせてもらえるのにと思いますが,現段階ではそういった演習の機会はないと申しあげなければなりません。学生諸君のご健闘とご活躍に期待するばかりです。
 最後に,参考までに感想の一例をご紹介します。

  • 家族の形態,質が時代と共に変化し,移り変わって来ている事を知り,“今”ここの問題は数年後には違ったものとして解釈されうると感じた。常に社会情勢,データ値を読み取り,「家族」のメンバー間に注目する以上に,そのメンバーに影響を与えているものは何かを知る努力が必要であることを知った。そのことから,時代の違いによる家族心理の援助の実際を知りたかった。
  • 講義を聞いて,つい自分や自分の家族に当てはめて考えてしまうことが多くあった。どのような「連合」か,また家族コミュニケーションのネットワークを見て,私の実家は「車輪型」だなと思って,しっかり者の母の姿が浮かんで思わず笑ってしまいました。
  • 講義を聞いて,自分の育った家族の状態がどんなものであったのかわかった。家族病理により不登校になってしまった児童を担任していたことがあるので,さらに豊富な事例と家族に対して,どのようなアプローチをしていくのが望ましいのか具体例をもっとたくさん知りたかった。
  • 家族というシステムの中で相互に影響を与え合っているという「円環的因果律」に関して,漠然と頭で判っていても,又そうであると信じていても自信がなかったが,講義を受けることで確信へと変わった。産業カウンセラーという資格のもと相談業務を行っているが,相談内容の「原因」とされているものが,いつもその問題のスタートラインではないかと感じてきた。相互にシステム員が影響し合って複雑性を持ち,その人だけをカウンセリングしても解決しない事例に多数出会ってきた。今回,講義を受けたことで家族心理学,システムにおける相互影響性についてもっと深く学びたいと感じた。
  • いろいろな家族関係の捉え方や?あり方,パターンなどなど,実に科学的に分析し多様な分類があって,今まで聞いたこともない内容(システム論,連合,同盟など)で,難しい講義だったがとても興味が深かった。私は看護師という仕事から,家族内のメンバーが病気を持つことで,家族心理学というものに興味があった。もっともっと詳しくカウンセリング場面やいろいろな家族の形態?崩壊?再生にまつわる具体的な症例などを聞きたかった。また,キーパーソンの役割や,そのキーパーソンへの配慮や支援の仕方や対応などについて聞いてみたかった。もっともっと講義を長い時間聞きたかったです。
  • 私も実際,小学生から高校生までの子を持つ親の悩みを聴くボランティアをしています。講義の事例と同じようなケースをたくさん持っているのですが,もっともっと深く掘り下げ,先生とマンツーマンでも話し合いがしたかったと思います。
  • 仕事柄(ケア?マネ+看護師)家庭訪問をしていた時や病院現場でそれぞれの家族の「看護力」「介護力」をアセスメントするようよく言われてきた。今までは体験からくる“カン”によるアセスメントをしがちであったが,「一般システム理論」を学んで充分には理解できていないが,視点を変えられるような気がしている。「本人の思い」と「家族の思い」とのギャップが大きいときに,今回の講義内容を思い出したい。

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