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VOL.51 MAY 2008

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卒業生からのメッセージ

卒業

福祉心理学科 大津 重樹さん

 北山駅を降り,石碑の並ぶ道を歩く。丘を降り,遠くに見える赤茶色の大きな建物を見たとき,ふと思った。「あれが,僕の母校なんだ。」
 私が前学歴の学校を卒業したのは,平成元年のことである。俗に言われる進学校を卒業したものの,その学校での成績は振るわず,いつも教師に叱られてばかり。勉強そのもので得られたものは,ほとんどなかったような気がする。いつしか勉強も嫌いになり,卒業もようやっとのことであった。もちろん,大学など行けるような状態ではなかった。
 両親は私が幼少の頃から,私を大学に行かせたいと考えており,私が進学しなかったのを,泣いて残念がっていた。そしてそれは同時に,私自身の心の中のしこりでもあった。
 あれから16年。私も34才になっていた。大学のことは据え置き,一公務員として勤務していた私が,突然のように東北福祉大学 通信教育部 福祉心理学科を志望したきっかけは,妻の言葉にあった。
 「今の仕事を続けながらでも,通信教育なら,大卒になれるよ」。
 妻も時折私が口にする,「大学に行かなかった」という言葉を,気にかけていたのだろう。
 「仕事をしながら勉強,それも習い事ではなく,大学での勉強なんて,絶対に無理」と断言していた私。しかし,そんな私も,かねてから持っていた心理学への興味も手伝って,戸を叩いてみようという気になっていた。幸い,入学審査にも通ることが出来,私の福祉大での学びはこうして始まったわけである。
 レポート作成が主となる,大学の通信教育。それまで,趣味的な勉強は行ってはいたものの,さすがに一筋縄ではいかない内容のものであった。私がはじめて取り組んだレポート,「生命の科学」。それが終わったとき,どの位嬉しかったことか……。今も忘れられない一コマである。
 しかし,そのレポートも4科目,5科目と重なっていくと,やはり一人で黙々と続けていく,その不安感と寂しさを感じるようになっていた。
 そんな中でやってきた,初の夏期スクーリング。初めて見る母校である東北福祉大学の校舎を見て,感慨深いものを感じた。科目は,心理学概論と,心理学実験I。皆真剣そのもので,居眠りしている者など一人もいなかった。老若男女,様々な人が入り乱れ,しかし皆一心に勉強している。この光景こそ,真の学びの姿なのだと,心から思った。そしてその中の一人として,学びに参加できる喜びを感じた。それが,私にとって初のスクーリングであった。
 そして,スクーリングも回数を重ねるうち,多くの友人もできた。皆,笑顔の下では,それぞれの境遇で一生懸命に頑張っている,そして皆,大学卒業という共通の目標に向かって走っている,同志であった。通信教育では,友人を作ることが大事と繰り返し言われてきたが,本当にそう思う。やはり私も,友人たちの助けがなかったら,ここまで来れはしなかったに違いない。
 決められた単位を期日までに取得することができず,精神保健福祉士の取得は断念せざるを得なかったものの,職場の同僚の方々の協力もあり,質問紙法による卒業研究も終えることができた。私の研究テーマは,「集団同一化と対人ストレスの相関関係について」である。この研究の一つの大きな結果は,集団同一化が高い,つまり,所属している集団を大切に思い,仲間を大切に思っている人ほど,持っている対人ストレスも低くなる,というものであった。思えば,私の福祉大での学生生活そのものが,知らず知らずのうちにこの研究テーマになっていたのではないか。
 前述したように,挫折もあり,また,職場では,「人が仕事をしているときに,休みを取って……」と上司に指導とも嫌味ともつかないようなことを言われたこともあった。しかし,友人たちとは,互いにそんなことも笑い飛ばし,皆で頑張ってきた。私は,そんな友人たちに本当に感謝しているし,これからも,それぞれの学びを続けていって欲しいと切に思っている。
 もうすぐ,卒業式がやってくる。
 「大学卒」今まで,この言葉にどれだけ悔しい思いをしたかわからなかった。そして苦労して,学士になろうとする今,この言葉が,今度は明るい輝きを持って迫ってくる。4年前に初めて訪れた校舎には,今度はきっと,今までの思い出が投影されるのだろう。
 最後に,御指導下さった先生方,いつも励まして下さった事務局の方々,よき助言を与えてくれ,私が少しでも勉強しやすいよういつも配慮してくれた妻に,感謝申し上げ,終わりとしたいと思います。

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