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VOL.68 JUNE 2010

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[教員MESSAGE] 心理療法
剽窃?不正行為はやめましょう!

准教授 秋田 恭子

 最近の心理療法の受講者からのレポートには,剽窃や不正行為を疑われるものが散見されるため,今回はそのことについて述べてみたい。

1 剽窃とはなにか

 辞書によると“ひょう―せつ【剽窃】ヘウ‥(「剽」は,かすめとる意) 他人の 詩歌?文章などの文句または説をぬすみ取って,自分のものとして発表すること。「他人の論文を―する」”(1998年『広辞苑 第五版』CD-ROM版 新村出編岩波書店)である。

2 意図的な剽窃と意図的でない剽窃

 意図的な剽窃とは,提出期限までに時間的余裕がなかったり,どうしても自分の考えがまとまらず,文章が思いつかないために,人の文章とわかっていても,それを明記しないままに,そっくりそのまま書き写し,あたかも自分が考えたことのように書いてしまうことである。これは意図的にものを盗む行為と同じである。他方で意図的でない偶発的な剽窃もある。他人の文章を読んで,感銘を受け,賛同して,それを自らの文章に借用したいと思ったとする。その際に,「使いたいのが原文の一部分だけだから」と引用符をうっかり付け忘れたり,出典を明記し忘れると剽窃になる。また,原文を自分なりに多少言い換えたつもりで,「もはや原文そのものではないので」と引用符を付けず,しかも言い換えが不十分で客観的には原文とさほど変わらないという場合には,これも剽窃になる。言い換える際には,十分に自分の中で原文を噛み砕いて完全に自分の文章に直しつつ,正確に同じ意味を伝えなければならない。そして原文の出典をきちんと明記しなければならない。

3 身近な剽窃?不正行為

 剽窃は,書籍や論文として広く世間に公表されているものを剽窃することに限定されず,より身近にも起こりうる。友人や先輩が許可してくれたからといって,その人達が書いた文章を,あたかも自分が書いたかのように装えば,友人や先輩に対しては無断借用でなくとも,立派な剽窃になる。友人や先輩が書いたレポートをお金を払って購入して,それを自分のレポートとして使ってしまうと剽窃や不正行為になる。心理療法のレポートでも,これで処分の対象となった学生の例がある。さらに,自分の書いたレポートでも,同じものを複数の異なる授業の課題として提出すれば,事前に教員が了解していない限りは不正行為となる。授業の課題レポートの作成の際に,受講者同士で協力することも,教員が事前に了解していなれば不正行為になる。

4 心理療法のレポートで見受けられる剽窃

 最近の心理療法のレポートに散見される剽窃の多くは意図的でなく,むしろ偶発的なものであると,私としては思いたい。指定教科書の文章を十分に自分の文章に直さないままに纏めただけで,しかも原文がどの文章なのかという出典を明記していないレポートが非常に多い。また,指定教科書に書かれてある事例を,あたかも自身の体験であるかのように,借用しているレポートも多い。異なる受講者から提出されたレポートに,同じ文章?表現が幾度も登場するということもしばしばある。参考文献としてその指定教科書をあげることは必要だが必ずしも十分ではない。出典の明示は,読者が容易に原典を探せる程度に詳しくなければならない。どの部分が著者のオリジナルであり,どの部分が他からの借りものなのか,読者に容易に判別可能でなければならない。借りた部分はそれとして明らかにしたうえで,オリジナルな自らの考えを著すのが本来のレポートである。剽窃は,著者のオリジナリティがどこなのかを曖昧にしてしまう。

5 剽窃をどう防ぐか

 研究は,個々の論文やレポート,個々人の考えの積み重ねによって進歩する。レポート作成の際には,これまでの先行研究を参考する必要が当然に生じる。全く文献を読まないでレポートは書けないので,参考文献ないし出典の明記が1つもないレポートなどは本来はあり得ない。しかし現実には皆無ではなく,出典を示すことの365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@性が理解されていないようだ。大事なことは,どこまでが他人の意見であり,どこからが自分の意見なのかの区別がわかるように文章に書くことである。そのためには,レポートの文中の借用部分を明記して,直接引用ならば引用符で囲み,言い換えでも,言い換えた原文の出典の委細を文末や脚注で必ずあげることである。「ああ,面倒くさい。たかがレポートで何もそんなに堅苦しいこといわなくてもよいではないか,自分は研究者でもなんでもないのだし,どこにも公表しないのだからいいじゃないか」と思われるかもしれない。しかし,世間に対する公表でなくとも,大学にレポートを提出する際にはルールに従わなければならない。大学教育では知的な創意を重んじる。そこでは,「他人が生み出した知識を自らのものと偽ってはならない」という厳然たるルールが存在しているのだ。

参考文献:

  1. Avoiding Academic Plagiarism Massachusetts Institute of Technology Homepage, Retrieved May 17, 2010
    from http://writing.mit.edu/wcc/avoidingplagiarism
  2. MIT Academic Integrity(2007 September 26)Massachusetts Institute of Technology Homepage, Retrieved May 17, 2010
    from http://web.mit.edu/academicintegrity/index.html
  3. 浦野 研(2008年6月29日)
    論文の体裁を整える:APA Style Manual を活用して
    http://www.urano-ken.com/research/seminar/2008/seminar_urano_2.pdf より
    2010年5月17日取得

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