仏教専修科
学生インタビュー(水野有人さん)「鶴見大付属高校から東北福祉大へ」
水野有人さんは鶴見大学付属高校出身です。
— 水野君は鶴見大学付属高校で寮生活を送っていたんですよね。
水野 はい。
— 寮はどんな感じでしたか?
水野 もしその日が朝六時に起床ということであれば、振鈴の係の生徒は五時半に起きて、お茶用のお湯をポットの中に入れたり、洒水器に水を汲んでお釈迦様の前に供えたりします。あと御仏飯を差し上げてから、時計の前に立ちます。六時ちょうどになったら振鈴を鳴らします。すると皆が下りてきます。ホワイトボードにあらかじめ今日のご飯当番とお風呂当番、それから欠員が出た時にその補充となる無役の人の名前が書いてあります。ご飯当番の人は朝ごはんを作り始めるんですが、ご飯当番は大体二人で、寮生は多くて五人くらいだったので、先生を合わせた六人分の朝ごはんを二人で作るわけです。残った三人が廊下?玄関?階段の雑巾がけです???
— そうするとほぼ修行道場と同じような生活をしていたわけですね。
水野 そうですね。ただ全く一緒という訳ではなくて私達はまだ高校生であるということを学校側が配慮してくれて修行道場とは別のところから揚げ物などを仕入れて食卓に並べていたという点では異なりますね。
— そうすると、福祉大の仏教専修科は水野君の感覚ではかなり緩い感じだったでしょうね。
水野 そうですね。もう知っていることが多かったですね。でも行事の時の侍者、侍香とかは寮生活では人数が少くてあまり経験できなかったんですが、福祉大では侍者、侍香をやる機会があったので、いい経験になりました。一回でも動きをやっておくと、少しでも頭に残りますから、本山へ行ったときに役立つと思います。
— 水野君の実家のお寺は総持寺系なんですか?
水野 父は永平寺と総持寺の両方で安居した経験があるそうなのですが 教わった着物の着方が総持寺式だったので恐らく総持寺系が基本となっているのではないかと私は考えています。
— 寮生活を経験したことは水野君にとって良かったと思いますか?
水野 そうですね、規則正しい生活を送ることを学んだのは良かったと思います。でも、寮の門限は五時だったんです。平日は学校の授業が終わるのは大体三時ごろですから、普通の高校生だったら「帰りにカラオケ行こうぜ」なんて話をしている時間です。当然誘われても行けるはずもなく、失った青春も数多くあったでしょう。しかし、失った分以上に得るものも多くありました。寮生活の中で多くの仏教に関する考え方、人生における価値観に触れてきたことで、今となっては誰かの為に何かすることが好きな自分にとって、これ以上ないほど向いている仕事ではないかと考えるようになりました。
— では他の人と比べるとあまり高校生らしい生活はできなかったんですね。
水野 そうですね。本山へ行くと修行僧の人たちと少し話をする機会が結構あって、「偉いね」という言葉と「かわいそうだね」という言葉を半々にかけられていました。寮生の中には部活に入っている人もいて、その人たちの寮での仕事を僕がかわりにやることもよくありました。本来お風呂掃除が自分の仕事であったとしても着物を着てご飯をもらいにいったり、帰りが遅いようならみんなのご飯を用意して、大会が近いと更に遅くなるでしょうから皿を洗いながら風呂を沸かして???なんてこともありました。
— 大学に入ってから仏教専修科で学んだことは、高校で学んだこととくらべてどうですか?
水野 まったくないというわけではないんです、「知識」というよりは「意識」の方でしょうかね。高校の時は儀式の時には先生、先輩に言われた通り「この次はこういう風に動く」という それに何の意味があるのかという事も考えずに形だけで覚えることが多かったんです。でも大学では一週間か二週間くらい前からならしをやりますので、「こういう意味があるからこういう動きをするんだ」という理解が深まりました。
— 高校ではお経とか道元禅師のご著作とかについて学ぶ機会はありましたか?
水野 高校生だったという事もあったせいか、正法眼蔵や修証義の意味といった難しいことは触れずに、「彼岸」「此岸」の由来とか、そういった基本的なことがらについて教わりました。あと、昔のお坊さんたちの詠んだ和歌などの話を聞いたりしました。
— 「仏教の教えを学ぶ」という点では、福祉大の仏教専修科の講義はどうでしたか?
水野 高校時代の自分は書物に書かれたこと、昔の偉い人が言ったことを覚えるに囚われていました。しかし、大学には様々な人がいて、日常生活の中で様々な刺激があります。たまに日常生活と仏教専修科の講義で学んだことが繋がり、理解が深まるという経験がいくつもあったので、とてもタメになりました。最後のまとめにはなりますが、仏教専修科の講義を通して学んだことは、物事に対する意識が大きいですね。それから一般的な大学生として大学に通うことで、人間関係の大切さに気付き、人から好かれようという努力もしました。お坊さんというのは地域住民とのかかわりが大事だと思っているので、その点からも、お経だけブツブツ言ってソレっぽいことを言っているんじゃだめだと思います。この人だから信頼できる、この人の話は面白いからまた聞きに行きたいといった気さくなお坊さんになれたらいいなと思っています。