仏教専修科
学生インタビュー(印海兵さん)「中国の仏教?日本の仏教」
印海兵さんは中国の上海のお寺から福祉大に留学生として派遣されています。日本に来てからすでに4年になり、日本語もずいぶん上達しました。仏教専修科の講義にも熱心に参加しています。
— 中国の仏教と日本の仏教には大きく違ったところはありますか?
印 基本的な教えは同じです。中国では日本人の仏教学者が書いた本も中国語に翻訳されていて、よく読まれていますよ。
— そうですか。どのような本が翻訳されていますか?
印 平川彰先生のインド仏教史の本とか、中村元先生の本とかですね。
— 平川先生の仏教史ですか。なるほど。
印 それから『正法眼蔵』の翻訳もあります。
— 何燕生先生の翻訳ですね。あれはいいらしいですね。
印 はい。
— 教えは同じということなんですが、仏教の社会的なあり方についてはどうでしょう。日本ではたいていのお寺は檀家さんによって支えられていますが、中国では少し違うようですね。
印 日本で「檀家」と呼ばれているものに近いのは「居士」ですね。でも大多数の人は「信者」です。信者の人々は個人的に仏教に興味をもって、お寺にお参りに来る人々です。
— 組織化されていないわけですね。
印 そうです。誰でも自由にお寺に来ることができますし、決まったお寺に通う必要もありません。
— 信者さんたちはお寺に来て、どんなことをして行かれるんですか?
印 お参りをして、和尚さんと話をして行かれます。日々の生活の中での悩みなどについて相談して行かれる方が多いようです。居士の方たちは仏教の教えに関する知識を学びにお寺に来られるのですが、信者の方たちは知識よりも信仰のために来られます。
— 信者さんたちはお寺へ来て和尚さんと話をして、満足して帰って行かれますか?
印 喜んで帰って行かれます。
— 印さんのお師匠様の場合、毎日何人くらいの信者さんにお会いになって話をされるのですか?
印 毎月1日には大勢の人が集まって講義のような形で話をするんですが、その他の日は1対1で個別に話をします。個別に話をしに来られるのは日によって違いますが、平均すれば1日に5人くらいですね。
— かなりたくさんの信者さんが来られるわけですね。
印 ええ。個人的な悩みの話をして行かれる方が多いようです。
— 信者さんたちが自分の抱えている悩みを打ち明けにきて、和尚さんがそれに仏教の立場から答えるということですね。
印 そうです。
— 日本のお寺は儀式が中心になっているところが多いんですが、すると中国のお寺ではカウンセリングの能力が大切だということになりますね。しかもかなり高い能力が必要になるでしょうね。
印 そうかもしれません。
— ところで、印さんは卒業後、中国に帰られることになると思いますが、帰国してから中国の社会に対してどのような貢献ができると思いますか?
印 福祉に関する知見を広めたいと思います。特に仏教的な福祉のあり方についての考え方を紹介したいと思います。
— そういったことはまだ中国の仏教界ではあまり議論されていない点だということでしょうか?
印 そうです。
— 福祉大で勉強したことを中国へ持って帰って生かしていくということですね。そしてお寺から発信していく。
印 まずは上海の師匠に日本での勉強の成果を報告して、師匠とよく議論したいと思います。
— ああなるほど。まずそこから始めるわけですね。
印 そうです。
— あとひとつ、ずっと気にかけていたことなんですが、日本で過ごしていて、外国人だからということで辛い目にあったことはありませんか?
印 ありません。学内でも学外でも、外国人だからという理由で辛い目にあったことはありません。
— 本当にありませんか?私(インタビューアー)は以前に外国で暮らしていた時、いろいろ辛い目にあって苦しんだのですが。
印 1回もありません。学内では何かあったら福祉大の国際交流支援室の先生に相談するように言われていますが、幸いに相談に行く必要を感じたことはありません。
— それを聞いて何よりもうれしく思います。今日は大変ありがとうございました。
(2021年12月公開)