2025/07/18 社会福祉学科

社会福祉を学ぶ人のストーリー:高齢者や障がい者の生活支援に心理学、社会学、医学、法制度の知識がなぜ必要なのか

何となく介護に必要な知識を中心に勉強しているイメージが強いかもしれませんが、高齢者や障がい者や子どもや家族の支援は、広い分野の専門知識が必要です。このお話は大学の社会福祉福祉学科で学ぶことについて、イメージを持っていただくための創作ストーリーです。

『その人の“できる”を支えるために』

大学2年の翔太は、社会福祉学科に所属している。福祉というと、どうしても「介護」というイメージが強くて、授業もなんとなく受けていた。

そんな翔太が、実習の一環で訪れたのは、地域の障がい者支援施設だった。そこで出会ったのが、脳性まひのある30代の男性?佐藤さん。車いすで生活しており、話し方はゆっくりだけれど、しっかりとした目で翔太を見て話した。

障がい者支援施設でのやり取り

「昔から動画を見るのが好きで。自分でも編集してみたいって、ずっと思ってるんです」

翔太は驚いた。動画編集?パソコン?なんとなく、「福祉=日常生活の手伝い」という固定観念しかなかった自分には、予想外の言葉だった。

少しでも会話を広げようと、「じゃあ、どんな動画を作ってみたいんですか?」と聞いてみた。しかし、返ってきたのは、静かな沈黙だった。佐藤さんがうつむいてしまったのだ。

「あっ、なんか変なこと聞いたかな……」

気まずくなって、翔太は内心焦った。そのときふと、前期に受けた「障害者の心理」という講義のことを思い出した。障がいのある人とコミュニケーションをとる際は、相手のペースや反応のしやすさに配慮が必要だと教わったはずだった。

——でも、そのとき翔太は、授業中にスマホをいじっていた。

「……あの時、ちゃんと聞いておけばよかった」

実感を伴って、後悔の念が湧いてきた。

その後、施設のスタッフがさりげなく間に入り、佐藤さんの緊張をやわらげるような質問を投げかけた。すると佐藤さんは、少しずつ話し始めた。編集したいのは、自分の日常を紹介する短い映像だった。自分のことを知ってもらいたいのだという。

施設スタッフと会話する翔太

スタッフのひとりが、「でも、佐藤さんの家にはパソコンもスマホもないんだよね」とぽつりと言った。

「え、どうしてですか?」

「お母さんと二人暮らしなんだけど、お母さん、シングルマザーでずっとパートでね。生活も結構ギリギリで」

その言葉を聞いたとき、翔太はまたひとつ思い出した。「社会学概論」の授業で取り上げられた、母子家庭の生活実態調査のデータ。シングルマザーの多くが非正規雇用で、子どもの学習環境にも格差が生じているという話だった。

「教科書に載っていた“母子家庭の貧困”って……こういうことなんだ」

翔太は、頭の中で大学の講義と今目の前にある現実が結びついていくのを感じた。

パソコンがないから動画編集はできない。けれど、それで夢を諦めるのではなく、どう支えられるかを考えるのが“福祉”なのだと、ようやく実感が湧いた。

後日???

——翔太の頭にはずっと佐藤さん親子のことが残っていた。

「動画編集がしたい。でも家にはパソコンもない。お母さんも非正規で生活が苦しい……」

翔太は、今日の「障害者福祉」の授業で先生が話していた、

「障害者総合支援法では、パソコンなどの補装具?日常生活用具が、障がい者の自立支援のために貸与?給付されることがあるよ。たとえば、視覚障がいのある人の拡大読書器、発話困難な人の会話補助装置など。本人の生活の幅を広げる支援なんです」という話題を思い出した

——「もしかして佐藤さんに役立つのでは……?」と翔太は初めて真剣に考えた。

大学の講義を受ける翔太

「権利擁護論」の先生の言葉も頭に浮かんできた。

「私たちの社会には、障がいがあるという理由だけで、教育や仕事、社会参加の機会を奪われてしまうことがあります。だからこそ“本人の意思”を大切にし、その人が望む生活を実現するために支援する“自己決定支援”が大切なんです」

佐藤さんは、「動画をつくりたい」とはっきり言っていた。あのときは自信なさそうだったけれど、それは「できない」と思わされてきた経験の積み重ねなのかもしれない。

「支援って、手を貸すことじゃなくて、“その人のしたいこと”を一緒に実現することなんだ……」

翔太は、授業の中で「制度名」としてしか理解していなかったそれぞれの仕組みが、今、自分の目の前の人たちの“生活”に直結していることに気づいた。

——翔太は、制度の情報を正しく知ること、自分にできることを考えることが必要だと思い、図書館に向かった。これまで本を読んでこなかったが、真剣に本を開いた。

図書館で勉強する翔太
※写真はイメージです。本学の付属図書館で撮影した画像ではありません

「“障がい者自立支援機器給付制度”……これだ……!」

翔太は思った。「そういえば、ソーシャルワークは実践にもとづいた専門職であり学問である、とかいってたよな。何だったかな『ソーシャルワークの基盤と専門職』とかいう授業だったかな。学問なんて自分には全く関係ないと思ってたけど、こうやってつなげていくのが学問ってことなら、なんか少し関係あるかも。」

社会福祉学科のカリキュラムには、様々な学問分野の科目が多数含まれています。


  1. 心理学関連科目
    • 臨床心理学概論
    • 社会?集団?家族心理学(家族心理学)
    • 福祉心理学
    • 障害者の心理
    • 発達心理学
    • 社会?集団?家族心理学(社会?集団心理学)
    • 子ども家庭支援の心理学
    • 老年心理学Ⅰ

  2. 社会学関連科目
    • 社会学と社会システム
    • 家族社会学

  3. 医学関連科目
    • 医学概論
    • リハビリテーション論
    • 認知症の理解と支援Ⅰ
    • 精神医学と精神医療Ⅰ
    • こころとからだのしくみA
    • 医療的ケアⅠ

  4. 法制度関連科目
    • 権利擁護を支える法制度
    • 刑事司法と福祉
    • 社会福祉法制論
    • 公的扶助論

  5. 経済関連科目
    • 社会保障論Ⅰ
    • ソーシャルビジネス論
    • 非営利組織論
    • マーケティング論
    • 福祉サービスの組織と経営

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