2021/12/23 社会福祉学科

後藤ゼミ(介護実習指導演習Ⅱ)ケーススタディ「理論思考に基づく介護過程の取り組み」

介護実習指導演習Ⅱ:後藤美恵子ゼミ


介護の専門性を確立するためには、その「質」を保障することが不可欠だと言えます。質の対象となるのは利用者であり、また介護は人としての尊厳が最大限に尊重されなければならないと思います。
 介護実習指導演習Ⅱの後藤ゼミでは、以下の3つのステージから「質」を保障するため、シラバスに基づき授業を展開し、最終的には「理論思考に基づく介護過程の再現性の検討」をテーマとしてケーススタディ(事例研究)を開催し、専門性に求められる視点、さらに理論思考の確立が介護過程の再現性に繋がる可能性について検討しました。この授業展開は大学で介護を学ぶことの意義を確認する1つでもあります。

【ステージ1】介護実習Ⅱ-1に向けた準備段階:4~7月

びっしり書き込まれた「介護過程(ICF:全体像 課題)」
びっしり書き込まれた「介護過程(ICF:全体像 課題)」

ステップ1としてモデルケースを用いて、情報をICF(※1)の関連図から構造的に読み解き、SAモデル(MicaEndsley,1995)(※2)から課題の分析を行いました。更に、導き出した課題の介護計画をPOS(Weed,1968)(※3)の理論を採用し、O-P(観察計画)、C-P(ケア計画)、E-P(教育計画)の3つの観点から作成し、特に3つの観点では評価基準を明確にすることに留意しました。ステージ1では、介護過程を一連の理論構造で整理することを意識して取り組みました。

【ステージ2】介護実習Ⅱ-1の実践段階:8月

ステップ1で作成した理論思考を用いて、介護実習Ⅱ-1(3週間)において具体的に実践展開しました。また情報収集の際には、ADL(※4)>評価の標準化を目的として、バーセルインデックス(Barthel,1965)(※5)を活用し、利用者の機能評価をしました。評価の標準化は専門職としての標準化の意味を含めています。  ステップ1で取り組んだワークシートを踏まえ、介護実習での実践展開では効果的に取り組むことができたと実習後のレビューで学生からの報告があり、思考レベルでは一定水準での介護過程の再現を確認することができました。

【ステージ3】介護実習Ⅱ-1のレビューと介護実習Ⅱ-2の準備段階:9~12月

発表の様子
発表の様子
 一般に、論文などすでに公表されている研究は、第三者がその研究で使われていた方法などを用いて同じ実験?研究を行った場合に、元の研究者(研究チーム)が行った時と同様の結果が出るようであれば、その研究は「再現性が高い」といわれています。
 介護においても「介護福祉士」としての実践の専門性を証明する1つとして、介護過程の理論思考を用いることによって「介護の再現性」を検討することが求められると考え、ステップ2として、データケースを用いて介護過程を作成し、「理論思考に基づく介護過程の再現性の検討」をテーマにケーススタディを学生主体で全4回開催しました。その際に行われるディスカッションテーマや方法は学生が企画運営しました。但し、前提条件として、全員が毎回必ず発言し、自身の考えや観点を伝えることにしました。
 以上の取り組み結果、第1点目として介護過程は、ステップ1の段階から、理論思考を確認できるように明確に記載し、記録上での介護過程の展開は構造上ではしっかりと描けていました。第2点目としてはステージが進むにつれて、特にアセスメントにおける情報の読み取り、分析において深みを増し、その背景として知識量と比例していることが記録からも伺えました。第3点目に利用者自身のニーズの把握が尊厳を尊重した個別性の高い介護過程を描けることがケーススタディで確認できていました。第4点目として、介護過程の一連のプロセスを理論的に説明できることが専門性を証明するためには必要であることが認識できました。
 ケーススタディ後の学生たちの感想の一部が以下の通りです。

【ケーススタディ:学生の感想】

発表の様子
発表の様子
  • 今回の計画立案、発表を通して、改めて自分の計画に足りない部分、直す良い機会となった。他者の発表からも、薬の副作用や現病歴の症状を計画に反映させる点から、次の実習における計画立案では自分の目やコミュニケーションを通して得られた情報を活用し、より具体的に個別性の高い計画を作成していきたいと感じた。
  • 計画を立案する中で骨折などのリスクに注意することが、利用者の動きを抑制してしまうことにも繋がることが分かり、しっかりと根拠をもっていく必要があると感じた。情報収集では、その人によって着目点や視点が異なり、ケースの実際に向き合った人と、情報から読み取った人の介護計画の違いが生じるのではないかと思った。そのため、介護過程を展開していく上では、情報収集において表現方法や詳細に記載することが必要だと理解した。利用者がもつ意欲ややってみたいという気持ちを叶えられるような計画や関わりが大切だと思った。
  • 自身の介護計画が実現可能かを考えると、足りない点や改善点は見えたが、再現可能であるとを思えた。しかし、利用者の気持ちをしっかりと捉える(情報収集)ことを一番大切にして介護計画を立案していくことが求められると感じた。
  • ケーススタディを行い、ニーズや情報を得る時に、基本情報が基礎となりアセスメント、介護計画へとつながることを意識しながら利用者の方とのコミュニケーションを取る必要があると感じた。自身の介護過程に実現性については、利用者の病気と服薬の作用(副作用含む)、周囲の方との状況をもっと計画に入れる必要があると思った。
  • ケーススタディでは、アセスメントと介護計画に矛盾がないように注意しながら計画を立てることができた。また、事前に資料を読み細かいところまで気にかけて質問を考えられ自身の力がついたと感じた。
 以上の取り組みは、学生一人ひとりの学ぶことの意識の高さの結果だといえます。そして、今回のケーススタディでの学びは、次期の介護実習Ⅱ-2(4週間)の実践展開に繋がることを確信し、ゼミ生たちの学びの姿勢に対して教員として誇りに思います。
 次期の介護実習では、学生たちと利用者の出会いが双方にとってよい時間となって頂けたら嬉しく思います。今後も介護の専門性や質の高い介護の確立に向けて、教育内容の検討をはかっていきたいと思います。


【ゼミに対する学生の感想】

  • 介護の専門職として介護福祉士の行う介護について考えることができたゼミでした。介護福祉士に必要な根拠のある介護を行うための記録の仕方や介護、人に対する考え方を学ぶことができた。難しいこともありましたが、より実践的な知識を身に付けることができた。
  • ゼミでは、アセスメントや介護計画立案において、根拠や理論をもとに考えたので、その点での力はついてきたと思う。また、記録の書き方等も丁寧に教えてくれたので実習に出た時に書き方に困ることはなかった。
  • ゼミでは、介護実習での取り組みに向けた実践的な学びができた。また自分の考え、介護に対する向き合い方について考え、共有し、理解を深めていくことができた。

【用語の説明】

①ICF
ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類)は、WHO(World Health Organization:世界保健機関)が2001年5月に採択した「人間の生活機能と障害についての分類法」です。

②SAモデル
SAモデル(Situation Awareness:状況認識モデル)」の過程では、(1)現在の周囲の状況から認識すべき対象を認識し、(2)作業の目的などに照らしてその状況を理解し、(3)その近い将来の状況を予測するという3段階のプロセスにあります。

③POS
POS(Problem-Oriented-System:問題志向システム)は、患者(利用者)の問題を明確にとらえ、その問題解決を論理的に進めていく一体系です。POSの構成要素は、①基礎データ、②問題リスト、③初期計画、④経過記録、⑤要約記録、以上の5つの構成要素があり、この構成要素に則って記録され常に監査?修正されるものです。

④ADL
ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)は、日常生活を送るために必要な日常的な動作で、「起居動作?移乗?移動?食事?更衣?排泄?入浴?整容」動作のことです。
?高齢者や障害者の方の身体能力や日常生活レベルを図るための365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@な指標として用いられており、リハビリテーションの現場や介護保険制度ではひとつひとつのADL動作を「できる?できない」、「どのような、どのくらいの介助が必要か」、「できるADL?しているADL」などの項目で評価します。また、日常生活動作(ADL)には、基本的日常生活動作(basic ADL=BADL)と手段的日常生活動作(instrumental ADL=IADL)とがあります。

⑤バーセルインデックス
バーセルインデックス(BI:Barthel Index)は、ADLの評価表(評価方法)で全10項目を自立?一部介助?全介助の分類を100点満点で採点します。具体的には、日常生活動作を把握するために、食事?移乗?整容?トイレ?入浴?歩行(移動)?階段昇降?更衣?排便?排尿の10項目についての評価を行います。

(後藤美恵子)