2022/09/02 福祉心理学科

【研究】中川裕美助教らの共同研究が「心理学研究」に早期公開されました

【参考図】集団所属性の知識を操作する図 (計6条件) (内集団: カープファン/外集団: ジャイアンツファンの場合)
概要
東北福祉大学 総合福祉学部 福祉心理学科 中川 裕美(なかがわ ゆみ)助教、広島修道大学 健康科学部 心理学科 横田 晋大(よこた くにひろ)教授、中西 大輔(なかにし だいすけ)教授の研究グループは、野球チームのファン集団における内集団協力について報告しました。

本研究は、中川?横田?中西が行ってきた一連の野球ファンにおける内集団協力研究の追試です。これまでの研究では、内集団 (自分の所属する集団) 協力のみに焦点を当てており、外集団 (他の集団) に対してどれくらい非協力的に振る舞うのかは検討されていませんでした。そこで、外集団の存在を明示し、集団間状況を顕現化することにより、内集団協力における心理メカニズムの働きが変化するのか否かを検討しました。

2018年2月に一般人を対象としたWeb調査を行い、野球ファン931名のデータを分析しました。以下は、本研究の概要です。

?内集団協力の指標は、場面想定法実験における援助行動です。第三者のBさん (相手) が困っている場面を想定させ、自分がその場面に遭遇した時にどのくらい援助すると思うかを5件法で測定しました。

?実験では、自分と相手の集団所属性の知識が操作されます (参考図参照)。集団所属性の知識とは、自分と相手が互いに同じチームを応援するファンであると分かる、自分だけ一方的に分かる、互いに分からないといったものです。援助を行うときに、その知識の違いによって協力の程度が変わるか否かを見ています。

?実験の結果、「互いに相手が同じチームを応援する野球ファン (内集団メンバー) である」と分かる状況 (内集団相互条件) でより協力的になり、一方的に相手が内集団メンバーであることが分かる状況 (内集団一方条件) でも不明の相手よりは協力的になることが明らかになりました。この結果は、今までの先行研究と一貫するものです。外集団メンバーに対しては、内集団に比べて非協力的になることも分かりました。

?内集団メンバーに援助をして協力的であることを分かってもらえば、何か将来的な見返りがあるかもしれないという「互恵性を期待する心理メカニズム」の働きが確認できました。同時に自分と集団の存在を同一視し、内集団を優越させることで自己肯定の欲求を満たす「集団同一視の心理メカニズム」の働きも確認できました。


論文題目
集団間状況の顕現性と実在集団における内集団協力の心理メカニズム
著者:中川裕美?横田晋大?中西大輔
掲載誌:心理学研究 Advance online publication
https://doi.org/10.4992/jjpsy.93.21316

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