2022/09/18 福祉心理学科 研究

【報告】第138回心理学コロキアムが開催されました

9月14日(水)に、第138回心理学コロキアムが開催されました。福祉心理学科の山口奈緒美准教授、中村恵子准教授の両先生に研究についてお話しいただきました。オンラインでの開催となりましたが、教員だけでなく、学生も多数参加し、研究手法や心理療法について学ぶ貴重な機会となりました。以下に、先生方の発表の概要を紹介します。


山口 奈緒美 准教授「葛藤解決における寛容:その自動性と非自動性」

被害者と加害者という役割が生じる非対称的な葛藤では、被害者が加害者を赦せると、建設的解決の可能性が高まります。寛容は被害者がいくつかの困難を克服した結果もたらされる非常に意識的なものであると考えられてきましたが、近年、比較的そうした意識的な要素を伴わず自動的に生じるものであるとも考えられるようになってきました。本発表では、寛容を抑制する、あるいは促進する動機のみが生じた被害者は、内的葛藤を伴わずに加害者に対する態度(寛容か、非寛容か)を決定するのに対し、加害者に対して寛容促進動機も抑制動機も同時に喚起した、すなわち内的葛藤を経験した被害者は、その葛藤と向き合った末、意識的プロセスを経て加害者を赦していること示唆する研究知見が示されました。

中村 恵子 准教授「集団社会化療法の開発」

集団社会化(グループソーシャライゼーション)とは、個人が所属集団に適応するために、自分から積極的にその行動様式や価値観を身につけ、その集団との同一化を図るという理論です(Harris, 1998)。本発表では、その理論と、遊びの中で様々な人間関係を体験することで集団への適応を支援する対人関係ゲーム?プログラム(田上, 2003)の技法から開発された集団社会化療法についてご紹介いただきました。この療法により、遊びを媒介に集団の関係に介入することで、その関係性を質的に向上させ、個人の集団適応を促進することが可能なことが示されました。
発表後は昨今のウクライナ情勢に絡めた発展的な質問や、既存のセラピーとの関連性について専門的な質問がなされるなど、活発な質疑が交わされ、盛況のなか終了しました。

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