2024/08/08 教育学科

教員インタビュー 門脇佳代子准教授(中等教育担当)

中等教育専攻?社会科コースに所属し、「日本の芸術?文化」や「日本美術史」といった美術史関係の科目を担当している門脇佳代子准教授へのインタビューです。

法堂(はっとう)の道元禅師像前で

————主な研究分野と本学科での主な担当科目の内容について教えてください。

 私の研究分野は、造形芸術の歴史を探求する日本美術史です。なかでも仏教主題の作品に興味があり、近年では、仏像と地域文化のかかわりについて研究しています。また、本学の博物館施設である芹沢銈介美術工芸館では、染色作家?芹沢銈介の作品や収蔵品に関する調査活動を行ってきました。

 

「日本の芸術?文化」は、学年や学部を問わず履修できるため、多くの学生が受講しています。西洋的な美術観が主流といえる今日において、日本の伝統美術の魅力を再認識するきっかけになることを願って、世界のなかの日本という視点で著名な美術作品を取り上げています。

3年生以上に開講されている「日本美術史」は、より専門的な内容になるため、教育学科の中等教育専攻の学生が中心となって受講しています。授業では、絵画?彫刻?工芸?書?建築の諸領域から各時代の作品を紹介し、先史から現代にいたる通史として日本の美術について概観していきます。材質や技法、様式といった造形そのものの特徴を理解し、またなぜそのような造形が生み出されたのかという時代背景と関連付けた「モノ」の見方を提示します。

—————日本美術史の研究者としての進路に進まれたきっかけは何ですか?

私が進学した女子美術大学は芸術を専門に学ぶ大学で、「古美術研究旅行」という必修科目がありました。1週間ほど奈良を中心とする古社寺をめぐり、古代の建築から仏像?仏画、その他の美術工芸品について、教員の解説を聞きながら、現地で実物をひたすら見学するという、今振り返るととても贅沢な旅行でした。当時は美術の勉強を始めたばかりでしたので、教員が口にする専門用語もわからないままに、その実物の発する存在感に圧倒されました。この時の経験が、自分の出発点かなと思います。

——————仏像について多くの論文などを書かれていますが、仏像の魅力と初歩的な仏像の見方を教えてください。

現代では、仏像を博物館や美術館で鑑賞する美術品と認識している人も少なくないように、仏像はとても美しい姿を私たちに見せてくれます。しかし美術品である以前に、仏像は信仰対象として制作され、受け継がれてきました。仏像の体現する歴史を理解するには、ぜひ寺院や地域のお堂に足をのばし、参拝してほしいと思います。本来の信仰空間に身を置くことで、仏像を通じて、数百年あるいは千年以上もの年月の重みを直に感じることができると思います。

 また、信仰対象である仏像には、仏教の教えや思想を伝えるための図像上のきまりがあります。例えば、手に持つ蓮の花は仏の真理を象徴するといった具合です。姿かたちや配置に関する基礎知識を教えてくれる入門書は、本学の図書館にもありますので、興味のある方はぜひ調べてもらえると嬉しいです。


—————本学科の中等教育専攻の学生たちには、大学でどのような力を身に付けて欲しいと考えていますか?

「教育」と「学習」の違いについて、前者は第三者によって個人の能力が伸ばされることで、後者は自らの主体的な意思によって行われる、と説明されます。以前、社会教育を研究している教員から、「生涯学習」とは「生涯楽習」なんだよ、というお話を聞きました。皆さんにとって、学ぶことは楽しいでしょうか? 大学生になると、活動の幅が一気に広がりますが、さまざまな体験のなかで、ライフワークにできるような自分の「好き」を見つけていただきたいと思います。好きなことをもっと知りたいと思うのは自然なこと。自分の感じた「なぜ?」を追究するうちに、自分自身の成長を感じ、さらに学びを通して人との輪が広がっていく。教育について日々考えているみなさんだからこそ、こうした学びの本質を、学生生活のなかで、自分自身によって会得することを願っています。

—————最後に、将来、中学?高校の教員を目指しているみなさんへ、メッセージをお願いします。

 20歳のころを振り返ってみると、将来への不安を感じることも多かったなと思います。当時は苦しいこともありましたが、自分の生き方を真剣に考えたから、迷うことができたのだと、今は感じています。中学?高校の教員を目指しているみなさんには、どういう教員になりたいのか、どんな風に生きていきたいのか、高校生活や大学での4年間のなかで存分に模索してくれればと思います。

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