2023/11/02 教育学科

教員インタビュー 庭野賀津子教授(初等教育専攻?特別支援教育)

今回は、特別支援教育の「聴覚障害」「言語障害」領域を担当する庭野賀津子教授へのインタビューです。

庭野教授は本学教育学部教育学科と大学院教育学研究科で教鞭をとりながら、長年、日本学術振興会の科学研究費を獲得して研究に従事し、これまでに国内外での論文発表や学会発表など、多くの研究業績があります。また、言語聴覚士と臨床心理士?公認心理師の資格を有し、特別支援教育の現場での臨床にも携わっています。

庭野教授は、様々な教育活動?研究活動がある中で,なぜ特別支援教育を専門とすることにしたのでしょうか。

子どもの頃から、漠然と教師という職業に憧れていました。しかし、どの校種?領域の教員になるかは決めかねていました。高校生の時、母校の小学校に「ことばの教室」(言語通級指導教室)が新設されたことを知り、その担当の先生を訪ねて「ことばの教室」の指導内容やニーズについて教えていただき、自分も言語障がい教育に携わりたいと考えたのが、特別支援教育を目指すきっかけでした。言語障がいがあることにより、人前でうまく話せなかったり、そのことで萎縮してしまったりする子どもたちを支援したいと考えました。

その後、大学時代にアメリカの大学へ1年間国費留学をする機会を得て、障がい児のための音楽療法を学び、特別支援教育に貢献したいという思いがさらに強くなりました。帰国後、特別支援学校の教員として5年間勤めた後、言語障がいや聴覚障がいを科学的に研究するため、大学院へ入学して博士号を取得し、研究の道へ進むことになりました。
 

現在取り組んでいる研究について教えてください。

さまざまな研究に取り組んでいますが、最近は健康科学部の田邊素子准教授と共同で、ヒトの脳機能と心理特性の関連を調べる研究に取り組んでいます。脳科学と特別支援教育は一見関係がないように思われるかもしれませんが、言語障がい、発達障がい、知的障がいのいずれにおいても、脳科学の視点から障がいを捉える必要があると考えています。

私は現在、脳科学、心理学、特別支援教育等の学会の会員になっています。脳科学の学会では、発達障がいの脳機能に関する研究が多く発表されていますが、それらの知見が特別支援教育の現場へ還元される機会が少ないことを残念に思っています。

私の研究では、fNIRS(機能的近赤外線分光法)という、非侵襲的に大脳皮質の脳機能を計測する装置を利用して、心理特性に関連する大脳の賦活部位を調べています。そして、研究から得られた知見を学生教育へ還元すべく、講義の中にも脳科学についての話題を取り入れています。現在の私の研究は基礎研究ですが、将来的にはその研究成果を特別支援教育の実践に応用していきたいと考え、日々研究に勤しんでおります。

また、本学には大学院教育学研究科があり、そこでも指導をしておりますので、科学的な研究に興味を持つ大学院生が入学してくれることを期待しています。
 

fNIRSの実験に取り組んでいる庭野教授

特別支援に携わる教員に必要な資質や能力とはどのようなものでしょうか?

特別支援教育は「教育の原点」と言われています。特別支援学校では1クラスあたりの幼児?児童?生徒の人数は少ないのですが、一人一人、障がいの種類や程度は異なり、まさに「個別最適な学び」が求められます。私は、特別支援教育の教員に求められる資質や能力は、基本的には初等教育?中等教育の教員に求められるものと同じと考えています。

「子ども一人一人に愛情をもって接することができる人」「教員という職業に使命感や責任感をもって従事できる人」「自分の担当する分野の専門知識を持ち、さらに高めていこうという意欲のある人」に教員になっていただきたいと思います。

また、特別支援教育の現場では、幼児?児童?生徒への直接的支援だけではなく、保護者への助言や教育相談を行う機会が他の学校種より多いかもしれません。私自身、言語聴覚士や公認心理師などの資格があるため、特別支援学校の外部専門家として保護者へのカウンセリングなどの臨床に携わっていますが、特別支援教育においては、教員もカウンセリングの基礎を学び、保護者の心情を理解しながら寄り添う姿勢が求められると考えます。
 

最後に、将来は特別支援教育に関わる仕事がしたいと考える高校生へのメッセージをお願いします。

本学教育学部では、特別支援学校の聴覚障害?知的障害?肢体不自由?病弱の4領域の免許を取得できます。聴覚障害領域の免許を取得できる大学は全国的にみても少ないため、本学に入学する大きなメリットの一つと言えます。

特別支援教育は、子ども一人一人に向き合い、その子に適した指導を考えて実践し、子どもの成長を目の当たりにして、日々感動と喜び、そしてやりがいが感じられる仕事だと思います。
  
本学では2年次より自分の興味のある分野のゼミを選んで、深い学びをすることができます。庭野ゼミには特別支援教育を学びたいという学生たちが集まっており、学年を超えて和気あいあいと、研究やボランティア活動に取り組んでいます。そしてゼミ生のほとんどが卒業後は教員として活躍しており、ときどき研究室を訪ねてくれます。ゼミ生や卒業生と語り合う時間は、私にとってかけがえのない大切な時間となっています。

特別支援教育についての学びは、特別支援学校に就職するか否かにかかわらず、将来、さまざまな場で活かされると思います。本学教育学部の卒業生の多くは教員や保育士になっていますが、なかには公務員、会社員、福祉施設の職員になる人もおり、それぞれの職場で特別支援教育の知識が役立っているようです。

ぜひ、東北福祉大学で一緒に特別支援教育について学びましょう。

庭野ゼミの学生たちとともに

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