2020/06/26 保育士?幼稚園課程

教育実習(幼?小)の事前事後指導

6月26日(金)の教育実習の事前事後指導は、「幼児教育の基礎知識 事例で学ぶ①」というテーマで、利根川智子先生より講義が行われました。

春休みの課題として、4つの事例検討がありました。それらの事例について利根川先生から解説をしていただきました。事例は4つありましたが、今回はその中の「事例①貸して 5歳児 5月」について書いていきます。

事例①「貸して」5歳児5月

新年度の喧嘩がやっと落ち着きを見せ始めた5月のある日、亜矢ちゃんが教室で絵本を広げ、楽しそうに読んでいました。そこへ舞ちゃんがやってきました。彼女もどうやらその絵本が読みたかったようです。

実は進級時にクラス替えと担任の交代があり、まだ新しいクラスに慣れていない舞ちゃんは、登園後まずそのお気に入りの絵本をながめ、それから園庭に出ていくというのが4月からの日課となっていたのです。

読みたいと思っていた絵本を亜矢ちゃんが先に読んでいるのを見て、舞ちゃんはちょっとびっくりし、立ち止まってしばらくどうしようかと迷っていましたが、おもいきって「貸して」と声をかけてみました。しかし亜矢ちゃんは絵本に夢中だったのか、気づかない様子です。もう一度舞ちゃんは「貸して」と聞いてみますが、返事がありません。まるで、無視しているかのようです。

しばらく亜矢ちゃんのようすを見ていた舞ちゃんですが、ついに「私の!」と言って、突然、亜矢ちゃんから絵本を奪い取り、駆け出していきました。驚いた亜矢ちゃんはすぐに舞ちゃんを追いかけ、「私の!」と背中を引っ張り、ついには奪い合いのけんかとなってしまいました。

引用文献(出典)塚本美知子?編著 2013 子ども理解と保育実践 —子どもを知る?自分を知る(株)萌文書林p. 18.


保育者の介入の影響について解説していきました。

(1)「けんかはだめよ。ふたりで仲良く読もうね。」(葛藤解決の努力目標を示す)
5歳という年齢から、喧嘩がいけないということは、子どもたち自身が分かっています。その時に、けんかを禁止、集団のルールを教えようとする働きかけは、「二人で仲良く読む」にいたる過程が抜けてしまっています。

喧嘩になるからには、理由がしっかりとあります。それぞれの思いがあり、ぶつかり合って、他者の思いに気がついて、おり合いを学ぶ機会になります。そのような機会に、それぞれの葛藤を扱わずに、ルールだけを教えることは、あまり適切とは言えません。

(2)「亜矢ちゃん、いやだったらお口でそう言いなさい」(気持ちを言葉で表す難しさ、否定的なことを伝える難しさをクリアするように伝える)
否定的なことを相手に伝えることは、難しいことです。否定的な内容を伝えられる勇気や、冷静さがあれば、つかみ合いの喧嘩にはなっていません。この場合、亜矢の気持ちを代弁して、理解を示すことが先です。


保育者の介入の影響

(3)「舞ちゃん、人が読んでいるのを勝手に取っていいのかな?」(子どもがわかっていることを告げる)
大人から「取っていいのかな」と聞かれるときは、いけないことがほとんどです。「だめ」と答えることも分かっています。なにがだめかわからないけど、「だめ」とこたえるようになります。それは、子どもたちにとっての学びの機会になるか分からりません。「貸してもらえなかったのね」と保育者なりの気持ちを伝えることが必要だとおっしゃっていました。このような関わりをすることで、子どもたちは、自分の気持ちを保育者に理解してもらえたら、気持ちも落ち着き、どうすべきだったかを考え始めます。


保育者の介入の影響

(4)「どうしてそうなったのかな?先生にわけを話してくれる?」(けんかの最中に経緯や理由を問う、落ち着くような働きかけをしてから経緯や理由を問う)
けんかの最中に、説明を求めることはあまりよくありません。理由を尋ねるなら、まず落ち着くような働きかけをすることが必要です。その上で、訳を尋ねるか、子どもから見た事実を伝えて状況を整理するのかは、落ち着いた段階で子どもの様子を見て判断していく必要があります。


本日の授業では、事例の映像を見たり、チャットで自分の考えを書き込んだりしました。オンライン授業ではありますが、普段の大学での講義と同様に、積極的に参加している学生の様子が見られました。今回の事例は、3歳以上児の子どもたちの様子で、幼稚園実習に活かすことができる子どもとの関わり方、声がけの方法などがありました。

事例からの問いに答えて終わりにせずに、解説を踏まえて、再検討をしたり、実習前に確認するなどをしていきましょう。


最後に幼稚園実習について、利根川先生から、お話をしていただきました。これから、幼稚園実習や就職活動で、さまざまな場所に行くことがあると思います。その際、コロナウイルスのことも考えなければなりません。つまり、さまざまな場所に行くということは、自分が感染する可能性もあるということです。これらのことを考え、行動していかなければならなりません。例年のように実習や就職活動をすることができず、不安に思っている学生が多いと思います。学生の皆さんが安心できるように、困ったことがあれば抱え込まずに、相談してほしいとおっしゃっていただきました。

みなさん、体調に気をつけながら、幼稚園実習や就職活動に向けて準備をしていきましょう!

記事担当:千葉早姫