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【現場から現場へ】

[関連施設紹介]
高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて
?2015年の高齢者介護?

せんだんの杜 杜長
中里 仁

●「高齢者介護研究会」報告書について

 2003年6月26日に一冊の報告書がまとめられた。タイトルは「2015年の高齢者介護??高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて」。
 この報告書をまとめたのは,厚生労働省老健局長の私的研究会「高齢者介護研究会」で,座長が「さわやか福祉財団」の堀田力理事長。今この報告書が,高齢者福祉関係者の間で大きな話題と熱い注目を集めています。
 何故かといえば,そのタイトルがまさに示しているとおり「戦後のベビーブーム世代」が65歳以上になりきる2015年までを想定して,実現しなければならない高齢者福祉の「新しい」社会的枠組みについてまとめられた報告書であり,しかもその内容がかなり具体的なためによけい関心が高まっています。

●高齢者の「尊厳」を支えるケアの確立の実現を目指し

 今回のタイトルは,この報告書のタイトルをそのまま使わせてもらいましたが,研究会設置の趣旨を含めた報告書の巻頭文「はじめに」を以下本文のまま紹介させていただきます。

 (はじめに) 「わが国の高齢者介護は,人口の高齢化が緒についたばかりの1963(昭和38)年に老人福祉法が制定された以降の歩みをみても,70年代の老人医療費の無料化,80年代の老人保健法の制定,90年代の福祉8法の改正?ゴールドプランの制定など,人口の急速な高齢化が進む中で,その時代,時代の要望に応えながら発展してきた。
 2000(平成12)年4月から実施された介護保険制度は,措置から契約への移行,選択と権利の保障,保健?医療?福祉サービスの一体的提供など,このようなわが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり,介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。
 介護保険法施行後3年が経過し,最初の保険料の見直しと介護報酬の改定という制度運営のワン?サイクルが終了した現時点において,介護保険制度の下における高齢者介護の課題を整理し,これからの高齢者介護とそれを支える社会について新たな次元を切り拓くために提言を行うことは,時宜を得たことと考える。
 本研究会は,「平成16年度を終期とするゴールドプラン21後の新たなプランの策定の方向性,中長期的な介護保険制度の課題や高齢者介護のあり方」について検討するよう,厚生労働省老健局の求めに応じ,本年3月に設置されたものであり,関係者からのヒアリングや集中討議,現場視察等を含め,10回にわたって議論を重ねてきた。
 本研究会では,引き続き人口の急速な高齢化が進むことを踏まえ,高齢者介護のあり方を中長期的な視野でとらえる必要があることから,わが国の高齢化にとって大きな意味を持つ「戦後のベビーブーム世代」が65歳以上になりきる2015年までに実現すべきことを念頭に置いて,これから求められる高齢者介護の姿を描くこととした。
 その姿を描くに当たっては,これからの高齢社会においては「高齢者が,尊厳をもって暮らすこと」を確保することが最も365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@であることから,高齢者がたとえ介護を必要とする状態になっても,その人らしい生活を自分の意志で送ることを可能とすること,すなわち「高齢者の尊厳を支えるケア」の実現を目指すことを基本に据えた。
 本報告書は,「尊厳を支えるケアの確立」のため,求められる施策をとりまとめたものであるが,その前提として,介護保険制度を持続可能なものとしていくことが必要である。この3年間の実施状況を見ると,高齢者の増加のスピードを大幅に上回ってサービスの利用が伸びており,この事態が続けばこれからの介護保険財政は極めて厳しい状況に直面することが予想される。
 そこで,自らの尊厳保持のため,自助の努力を尽くし,さらに,地域における共助の力を可能な限り活用することにより,結果において公的な共助のシステムである介護保険制度の負担を合理的に軽減させるなど,広い見地からフォーマル?インフォーマル,自助?共助?公助のあらゆるシステムをこれまで以上に適切に組み合わせながら,これからの高齢社会において「高齢者が尊厳をもって暮らすこと」を実現していくことが,国民的課題である。
 本報告書が,このような課題を考える際の素材として活用され,国民の老後の安心をもたらす高齢者介護の実現に寄与することを心から期待する。」

 以上,巻頭の「はじめに」の全文。キーワードは「尊厳」。

●「尊厳」を支えるケアの確立への方策

 そして,報告書の本文では「尊厳」を支えるケアの確立への方策とし,[1]「介護予防?リハビリテーションの充実」,[2]「生活の継続性を維持するための,新しい介護サービス体系」,[3]「新しいケアモデルの確立:痴呆性高齢者ケア」,[4]「サービスの質の確保と向上」の4つの柱が示されており,そのなかの「生活の継続性を維持するための,新しい介護サービス体系」においては,(1)在宅で365日?24時間の安心を提供する,(2)新しい「住まい」,(3)高齢者の在宅生活を支える施設の新たな役割り,(4)地域包括ケアシステムの確立とあり,その概要については次の資料をまとめられております。

生活の継続性を維持し,可能な限り在宅で暮らすことを目指す
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●社会が求める新たな「福祉モデル」の創造を目指して

 「生活の継続性を維持し,可能な限り在宅で暮らすことを目指す」と題された報告書の資料をご覧いただくとお気づきになる方もいらっしゃると思いますが(小さくて見ずらいかもしれませんが),「ユニットケアの普及」「逆デイサービス」「サテライト方式」「既存民家の活用」そして「小規模?多機能サービス拠点」といった,これまで『With』でご紹介してきた「聞きなれた」キーワードが盛り込まれていいます。
 実は,この報告書で提案されている「新たな」サービスのいくつかが,東北福祉会がこの8年間に先行し実践してきたモデル事業を参考とし,作成されたものが含まれているからなのです。法人開設以来,利用者主体の原則を基本理念に掲げ,新しいサービスの開発とその実践をとおし,「誰もが安心して暮らすことのできる共生社会」すなわち,誰もがひととしての「尊厳」が保たれる社会を構築するための一翼を担うという法人の役割りが,少しずつではありますが形となって表れてきております。

 次回からは,宮城県桃生郡桃生町にあります「せんだんの杜ものう」の各種事業についての紹介をさせていただきます。

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