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VOL.27 MAY 2005

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[社会福祉学科]
21世紀初頭に社会福祉を学ぶ皆さんに期待すること

教授
阿部 一彦

 社会福祉学科に入学した皆さん,そして進級した皆さんおめでとうございます。通信教育部に入学,進級した皆さんは,人生経験の豊かな方々,福祉,教育,医療などの経験を持つ方々,そして高等学校を卒業したばかりで未成年の方々などを含めて多様です。
 社会を構成する一人ひとりも多様な価値観を持ち,主体的に生きる人々です。ここでは主体性と多様性に着目して社会福祉の変革について考え,そのような21世紀初頭に東北福祉大学において社会福祉を学ぶ皆さんへの期待について述べたいと思います。

◆社会福祉領域は変革の時代

 20世紀後半の50年間,社会福祉サービスを利用する人々は,行政によって一方的に決定されたサービスを利用しなければなりませんでした。措置制度と呼ばれるその基本的な仕組みは社会福祉事業法(1951)という法律に基づいていました。しかし,その法律も20世紀の最後の年に改正されて社会福祉法(2000)となり,利用者一人ひとりが主体的にサービスを選択し,サービス提供者と対等の契約を結んでサービスを利用することができるような枠組みが成立しました。また,それぞれの分野において利用者さんが主体的にサービスを選ぶ具体的な仕組み自体は,高齢者福祉では介護保険制度(2000),障害者福祉では支援費制度(2003)により実現しました。
 このように,現在,社会福祉は「保護」から「自立支援」へという変革の時代を迎えています。

◆利用者の主体的な生活を支え,支援する力

 社会福祉のサービスを利用する人について理解を進める場合,国連?国際障害者年行動計画(1980)の障害者の定義が役に立ちます。そこでは,「障害者は,その社会の他の異なったニーズをもつ特別な集団と考えられるべきではなく,その通常の人間的なニーズを満たすのに特別な困難を有する普通の市民」と考えられるべきとされています。
 この定義に基づいて考えますと,障害のある利用者さんにとって「特別な困難」をとりのぞくことができれば,通常の人間的ニーズを満たすことができるようになります。ところで,自立とは,「特別な困難」があっても,一人ひとりの多様な価値観を大切にして,各人の自己決定のもとに希望する多様な生活を営むことです。このとき,社会福祉のサービスを利用する,いわゆる利用者さんは自らに関する「特別な困難」を構成している一つひとつについて分析し,それらの課題を除去し,また補完するためにサービス(社会資源)を活用していくことが求められます。
 しかし,日ごろ「特別な困難」に悩み,苦しみ続けている利用者さんには自分ひとりでは解決する力が十分に発揮できない場合が数多くあり,社会福祉のサービスの内容を理解することにも難しい場合があります。そのようなときに利用者さんのもつ潜在的な自己分析能力や自己決定能力を引き出し,主体的な社会資源の選択を行う手助けをして,利用者さんの自立支援にかかわるのが社会福祉の専門職です。
 そして,社会福祉の支援にかかわるものは,利用者の方々の多様で個別的な人生にかかわるのですから,利用者一人ひとりを十分に理解する力,コミュニケーションする力,一人ひとりのニーズにあった社会資源に関する知識と活用する実践力を培うことなどが求められます。

◆実践と学問──行学一如の精神

 このような利用者主体,自立支援を基本とする社会福祉構造の変革の時代に,皆さんは社会福祉の専門職を目指して東北福祉大学に入学,または進学しました。東北福祉大学には,「行学一如」の精神があります。「仏道をきわめるとき,修行と学問は別々のことではなく,一つのことですよ」という意味だと思いますが,社会福祉領域においても「実践と学問は一つ」です。学んで実践活動を行い,実践活動により学びの焦点を定めてさらなる学びを深め,さらによりよい実践活動向上へと導かれる好循環の展開が期待されます。実践と知識は互いに補完しあいながら高めあって,互いに「分かつことのできないもの」として一人ひとりに身についていくのです。
 そこで,皆さんには学ぶこととともに,ボランティア活動などの実践活動を行ってほしいと思います。そして,それらの活動体験を通してさらにポイントを定めて学びを深めていただきたいのです。

◆考える力を培うことの大切さ

 皆さんが将来,社会福祉の専門職としてかかわる利用者一人ひとりは多様な価値観を持ち,多様な生活上の困難に直面する方々です。社会自体も大幅に変動し,さらに複雑化していくことを考えますと,将来遭遇するすべてのケースについて,大学生活だけで具体的な支援のすべての方策を学ぶことは不可能であると思います。
 このように考えますと,互いに補完する実践力と学問を身につけるとともに,将来の応用力を育む必要があります。応用力は,「常に考える姿勢」や「考える方法」を身につけ,「考える力」を培うことです。特別な困難に直面している利用者さんには時間的ゆとりのない傾向が多いので,社会福祉にかかわるものは立ち止まってじっくり考えるゆとりはありません。走りながら考え続けなければならないのが社会福祉の専門職です。皆さんには,走りながら考えていくだけの柔軟性を伴った応用力,すなわち,「考える力」を培って,磨き続けてほしいと思います。
 21世紀初頭の社会福祉変革の時代に大学生活を送る皆さんには,「行学一如の精神」をもとに「考える方法」をしっかり学び,「考える力」を培い,自分自身の価値観にとらわれることなく,利用者一人ひとりの価値観に基づいて「考える」社会福祉専門職を目指していただきたいと思います。

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