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VOL.27 MAY 2005

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[関連施設紹介] 施設運営と収入《その2》

医療法人社団 東北福祉会 せんだんの丘 事務長
大森 俊也

◆今回のテーマ──施設運営と収入(2)

 前回は,介護老人保健施設の運営と事業収入についてふれ,入所事業の充実と居宅サービス事業の拡張についてお話してまいりました。今回は,「よろこび」を「自信」につなげる運営と費用についてすすめてまいります。

◆よろこび

 私たちは,利用者の生活が豊かで楽しい日々を過ごせるよう自立を支援する介護保険事業所を運営し,このことを通じて社会福祉の実践に従事しています。そこには,「よろこび」の表情をバロメーターとして努力する一人ひとりの職員の姿があります。私たちには,そこで交わされるコミュ二ケーションから介護?看護?リハビリなどに携わるプロの援助者としてすべてに受容と共感をし,目標に到達する「よろこび」を成就感として共有することのできる,人間的な成長の機会が与えられています。
 また,個別のケアプランによるスタッフ間のアプローチ,職員一人ひとりのかかわりの積み重ねやチームケアの実践によっても「よろこび」を見つけることができます。「よろこび」の中に多くを学び,次なる展開を実践しています。

◆「よろこび」から「自信」へ

 介護保険施設の収入は,利用者の介護度により差がでてきますが,包括払いと出来高払いによるものとなっています。全員の要介護度が5で365日欠員がなければ,それが施設報酬の上限となります。言わば減収する確率の高い介護報酬をどのように増収するか(経営)とそれをいかに活かしていくか(運営)は,表裏一体ということができます。つまり,経営や運営の基盤としての「よろこび」が,職員のモチベーションをあげていくことになります。

●生活をベースにした取組み1

 せんだんの丘では,生活に根ざしたリハビリテーションの一環として,スーパーマーケットに買い物に出かけていくユニットもあります。翌日には,買ってきた具材をもとにしたお好みの味噌汁やおかずを作り,お昼の食卓を楽しんでいます。例えば,味噌汁のできあがるまで,さまざまな会話を弾ませ,昔話に花が咲きます。自分流というわけにはいかないからこそ,会話の中にご自分を発見する……という光景が展開されています。
 できることを伸ばす環境や手続きは,「よろこび」から「自信」を引き出してくれます。午前中の外出は,気ぜわしさはあるものの「お帰りなさい」「今日はどうだった?」と生活の広がりが人間関係を豊かにし,ユニットの中を明るい雰囲気に包んでくれます。何と言っても自立のための外出支援ですから,当然出かける前には,着替えをしたり,女性は,お化粧をしたりと言うようにご自分でできることは最大限発揮しての外出となっています。
 用意周到な準備があってこそ「できるかな」から「できた!」へと,これが「よろこび」から「自信」という達成感につながり,ケアに対する職員の感性を豊かなものにしてくれます。

●生活をベースにした取組み2

 仙台市の桜の開花宣言は,毎年4月初旬から中旬です。これからがユニットごとにさまざまな取組みが活発になります。外庭には,2マスの畑があって土起こしも種まきもこの時期からです。初め花壇と畑をと考えていたのですが,野菜作りのバリエーションも増えてきたことやいつのまにかギャラリーだった方たちが麦わら帽に軍手といういでたちに変身するというマグネット効果が働き,「よろこび」と「楽しみ」になっています。「楽しみたい」という気持ちが,行為や行動を生み出し「自信を引き出す」まさに感性の力が働いているものといえましょう。
 せんだんの丘の畑には,何やら奇妙な棒が立っています。1点杖と同様の働きをする手摺りなのです。実は,畑作りにフェンス工事などで80万円ほどを要しました。「手摺がほしい」とスタッフから要望のあったときには,「どのくらいの費用がかかるのだろう」ということと同時に「職員だけではなく利用する方たちの利用しやすいものにしなければ意味がない」として対候性と横移動の手摺に見合う材質は……とあれこれ思案をしていました。ところがリハビリスタッフから「焼き杉の丸太杭を購入したい」と申し出のあったときは正直驚きました。7,000円くらいで捕まり棒ができ,今も草取りや水遣りに効果を発揮しています。「できたときのよろこびを共有できるからこそ,お金が活きる」と言うことになりましょうか。
 施設でのリハビリテーションの展開は,介護老人保健施設運営の主目的ですが,「費用をどのように活かしていくか」は,経営と表裏一体です。環境,人,時間の相互作用のなかから「よろこび」と「自信の回復」が確実になされていく姿をこれからも大切にしていきたいと考えています。

◆創りあげた自信を共有する

 せんだんの丘では,この5月から総合的リハビリテーションの一環として社会福祉法人東北福祉会の介護老人福祉施設「せんだんの里」と「せんだんの館」へのリハビリテーション職員の派遣をはじめることにしています。生活の中にリハビリテーションが根づくためのアセスメントをケアワーカーと一緒に考えていこうというものです。そのためせんだんの丘では,作業療法士の増員と理学療法士の新規採用をしました。今後は,言語聴覚士をリハビリテーションスタッフとして迎える検討もしています。
 大切なことは,リハビリテーションとしての対象者やアプローチの仕方に相違あっても「生活をベース」にすることが共通項として明確であれば,日々の情報交換のもとにトータルなリハビリテーションが展開し,同時にスタッフが育成されていくことにもなります。施設入所利用者だけではなく,通所,短期入所,訪問事業のすべてにわたって地域福祉に根ざした活動を実践し,職員の創りあげた自信を共有して働き甲斐のある,自信に満ちた職場環境にしていきたいと考えています。

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