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VOL.41 JANUARY 2007

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[関連施設紹介] ユニットの看護師の役割

医療法人社団 東北福祉会 介護老人保健施設 せんだんの丘
事務長 大森 俊也
総看護師長 稲見 美和子

 せんだんの丘は,2000年4月に開設した入所5,通所1のユニットケアを採る施設です。入所部門には,看護,介護,作業療法士が全ユニットに配置され,ケアマネジャーをはじめ支援相談員,実習教育相談員,言語聴覚士,管理栄養士,歯科衛生士などのスタッフがトータルにかかわるようにしています。

◆介護保険施設

◇「介護保健施設サービス」とは,「介護老人保健施設に入所する要介護者に対し,施設サービス計画に基づいて行われる看護,医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話をいう」とされています。

◇「介護福祉施設サービス」とは,「介護老人福祉施設に入所する要介護者に対し,施設サービス計画に基づいて行われる入浴,排せつ,食事等の介護その他の日常生活上の世話,機能訓練,健康管理及び療養上の世話をいう」とされています。

◇「介護療養施設サービス」とは,「介護療養型医療施設の療養型病床群等に入院する要介護者に対し,施設サービス計画に基づいて行われる療養上の管理,看護,医学的管理の下における介護その他の世話及び機能訓練その他必要な医療をいう」とされています。
※「介護療養施設サービス」は,2012年3月までに全廃されることになっています

 あらためて「介護療養施設サービス」3施設の特徴を列記してみると施設の機能と役割の重みを感じます。
 施設の介護,看護,機能訓練等は,それぞれの計画が独立して機能するものではなく,利用者(要介護者)一人ひとりの心身の機能や疾病の状態にもとづく多職種の協働により自立に必要な支援を目指しています(介護保険法第7条21-23)。

◆看護?介護?リハビリのユニット人員配置

 介護老人保健施設の人員配置基準での看護職数は,看護職員+介護職員の常勤換算で入所者:職員=3:1以上の比率で配置することになっています。介護報酬上の基準によると100名の定数で看護?介護職員の最低必要数は,常勤換算では33.4名です。通常は34名,そのうち看護職員の配置人数は看護2/7程度,介護職員5/7程度とされ,当施設では,看護職員数10名、介護職員数24名に対して34名としています。さらにリハビリの職員は,通常1名のところ入所の5ユニットに1名ずつ配置しています。

◆生活に必要な医療の提供

 当施設では,「看護,医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話」という文字通りのチームケアが実践されるなかでのキーワードを「生活に必要な医療の提供」としています。ユニット型施設は,ずいぶん増えてきましたが,ユニットケアが上手く機能すると「ケアがあって人が見えない」という流れ作業の原理に対峙するワンストップ?ケアが実現されます。
 少数職員でのチームケアは,多対多,多対1の関係ではなく,1対1のかかわりがより一層明確になります。「ケア」に責任の軽重は絶対にあり得ませんから,経験の浅い職員には,重圧感となる場合が多いようです。ユニットケアでは,職員が蓄積してしまいがちな悩みを解消することはとても365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@です。

◆職種の垣根を取り除く?バリア?レス

 看護職,リハビリ職,介護職とでは,職務内容が異なります。介護職には,医療的処置が認められていません。したがって,看護?リハビリの職員がバリア?レスをどのように理解するかと言うところにケア全体の生命線があるということになります。「介護」は,業務独占されていませんから,看護師やリハビリ職員だから入浴介助,排泄介助,食事介助や外出行事に従事できないという理由にはなりません。人の顔が見えても暮らし方を知ろうと努力しなければ,「その人らしい」姿への生活支援は成立しません。利用者自身が具体的に「こうしたい」というときに,職種間に垣根があったのでは,見えていて手を出さないことになりますから本末転倒ということになります。

◆見えていることに気づくこと

 看護師,リハ職員が,入浴介助に入ると言うことは,ユニットにかかわる他の職員からのサポートがなければ実現しません。ユニットにかかわる職員が,見えていることに気づき,気づいたことを適切に伝達することを平素から実行していなければなりません。

稲見 看護職は,利用者の健康回復や健康増進を支えるだけでなく,介護職を支えるという,導きを行ってきています。「なぜ」という疑問を持って仕事に向き合うように絶えず問いかけてきました。例えば,「なぜ,冷やすか」「なぜ,休ませるか」という問いかけをしていかなければ,その場限りの介護になってしまいます。「なぜ」という視点が利用者を理解する「利用者をみる目」を育て,将来のケアを創ることができます。ここが丁寧にできると日常のケアもリスクマネジメントも可能になると考えます。

大森 そうですね,せんだんの丘のこの7年を振り返ると,それまでは5ユニット全てのユニット主任をケアワーカーとしてきましたが,経管栄養(胃瘻)の入所者が増加したことや吸引等の医療処置が増えてきたことから2年前に看護職を主任としたユニットを1つ作りましたね。

稲見 施設は,利用者のためにどのように変化していくかを実践しなければなりません。もともと医療密度の高い方のユニットとしていたので,看護師を主任とするタイミングと判断しました。

大森 でも,日常的なケアに大きな変化はありませんね。

稲見 利用者のニーズに応える看護師もケアワーカーもリハ職員もみな,1人の人を見るのは同じで,ユニット行事に参加すること,外出に同行することなどは当然です。生活の場面に看護の専門性を活かすということは,生活モデルとして“生活に必要な医療”が提供されるところにあります。当施設の看護師は,ユニットの介護,リハビリの職員から寄せられる情報に対し,早急なもの以外は,主任やカンファレンスを通じてケアの一員としてかかわっていきます。

大森 総看護師長は,訪問看護の管理者であり,看護師長との調整,ユニット看護師との調整も出てきますね。

稲見 私も看護師長も夜勤業務に入っています。各階の看護師は,自ユニットをベースに1人で100人を知っておくようにしています。看護日誌を通じて情報共有をしてきましたが,昨年から“気づきノート”の記載をはじめました。

大森 活かすための記録づくりですね,どのようなものですか。

稲見 看護の申し送りは,看護日誌になるので,ノートには,看護の申し送り以外に気づいたことを書き込むようにしています。このノートの活用によって,各自の活動が客観的にとらえられるようになり,建設的な意見交換,情報交換が行われ“ナース会議”も様変わりしたと感じています。

大森 ナース会議は,どのように進められていますか。

稲見 月例会議の進行は,司会を輪番制にして様々な視点からの検討材料を持ち寄り,疑問について話し合います。例えば,ユニットの現在状況,情報の交換や効果的な勤務シフトについてなど“どのように解決するか”という共通理解,マニュアル作りへの展開やごく基本的なことですが,交代勤務の職場にありがちな「やったつもり」「言ったつもり」などの確認もおこなっています。

大森 情報の共有は,ユニット組織の運営などに欠かすことができないですね。疑問の整理は「見る目」をとりもどすということになっているのですね。

◆疑問の整理

 「見えていることに気づく」という裏返しは,「見過ごしている」ということですが,残念なことに見過ごすと言うことはたくさんあると思います。それらを内省し自己覚知することが大切で,「なぜ」という疑問をもたなければ,スーパーバイズという大所高所にわたる広角的な視点からケアを構築するということはできないことになります。
 実は,このような側面的な支援が日常のケア職員に必要であり,つまり,職場内教育(OJT:on the job training)がしっかりできている職場では,疑問の整理の仕方がはっきりとしているのです。

◆看護師の勤務

 日中の看護師は,医療的な処置等以外はユニットケアワーカーと同じ仕事をこなしています。看護師の夜勤は,配属されているユニットの1夜勤者であり,かつ急変時に備えて他ユニットの介護職員をサポートするという,ハードな連携のもとに実施してきました。しかし,現在では,経管摂取(胃瘻)者が増えたこともあり,これまでの夜間勤務体制(16時から翌日9時までの夜間勤務者)に加えて,20時から翌日9時まで夜勤看護師を増しています。他の施設からは,100名に対して6名の夜勤体制は「恵まれていますね」とよく言われます。現在の夜勤態勢は,利用者の安心であり,職員の安心につながっているということに他なりませんが,ユニットケアの目指すべき日中夜間のユニット化は,経営面での費用増を意味します。

◆これからの施設運営と看護師の役割

 ご存じの通り厚生労働省は,介護老人保健施設の役割として在宅復帰を目指すよう介護報酬の改定により運営の転換(適正化)を求めています。介護老人福祉施設(特養)も在宅に復帰する可能性を持ち備えた施設ですし,終の棲家となりうる特定施設や介護付き有料老人ホームのような施設形態も誕生してきたことを考えると,介護老人保健施設の役割は,積極的な在宅復帰の場であることは明確です。例え,利用者の家族介護環境が変化しても施設利用目的を“在宅復帰”としていく必要があります。
今後の看護師の役割は,在宅復帰する利用者の生活を支える必要性を強く意識しながら,入?退所に積極的にかかわっていく必要性があるといえます。これまで介護?リハ職員を“縁の下の力持ち”で支えてきた看護職ですが,在宅復帰者についてもアフターケアすることは,利用者にとって何よりの安心感となると思います。
 ※ここにこれからの老健経営の鍵があると考えています。(筆者私見)

 次回は,ユニットでのリハビリテーションについて紹介をいたします。

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