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[誌上入門講義]
こころの健康と福祉 ?精神医学の立場から?

教授
佐藤 光源

●ノーマライゼーション

 ノーマライゼーション(Normalization)は,障害をもつ人ももたない人も同じ社会の中で一緒に生活しようということで,障害者にはその権利が保障されています。福祉も医療もこのノーマライゼーションを目指す点で共通しているのです。それは当たり前といえば当たり前のことですが,精神障害者について日本でそれをはっきりと規定したのは,まだ10年前(1993)に過ぎません。ご承知の「障害者基本法」が制定され,知的障害,身体障害だけでなく精神障害にもノーマライゼーションの原則が適用され,障害をもたない人と一緒に社会参加する権利が保障されたのです。さらに1995年には,それまでの「精神保健法」が「精神保健福祉法」に変わり,精神保健と精神福祉は不可分のものになりました。このように,こころの健康と福祉が脚光を浴びるなかで21世紀を迎えたのです。

●精神障害者の状況

 精神障害の現況をWHOの統計資料でみますと,障害とともに生きる期間が長い病気のベスト10のなかに,うつ病(1位),アルコール依存症(5位),統合失調症(7位),双極性気分障害(9位)の4つが入っています。たくさんある病気のなかで,こころの病気を抱えて長く苦しんでいる人がいかに多いかよく示されています。
 現在,世界中で4億5千万人もの人が精神障害を抱えて苦しんでおり,将来的にはもっと増加すると予想されています。にもかかわらず,例えばWHOのサラチノ氏によりますと,全医療費に占める精神保健関係の予算は世界平均で2%にすぎない。ベスト10の中に4つも精神障害がありながら,そのための医療費や保健福祉関係の費用は非常に低く抑えられている。“身体”のいのちが優先され予算にもそれがよく反映されていますが,“こころ”のいのちの方はそうでない。こころの健康とQOLの高い生活が求められている現代社会にあって,まだ決して十分とはいえないのが現状です。

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