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【学習サポート】

[誌上入門講義]
こころの健康と福祉 ?精神医学の立場から?

教授
佐藤 光源

●はじめに

 今日は,「健康と福祉」を精神医学の立場からお話しようと思います。
 みなさんは東北福祉大学に入学されたわけですから,「福祉とは何か」ということはすでにご承知のことと思いますが,一般的な理解はどのようなものか『広辞苑』で調べてみますと,「人間が幸せであるということ」,「公共のサービスで国民の生活を安定させること」,狭い意味では「不健康な状態を健康にする」といったことが書かれています。しかし,おそらく言いたいのは「人として幸せに生きる」あるいは「人としての生きがいを増す」の福祉であり,それをみなさんが支援し実現することではないかと思います。
 また,大切な一日を幸せに過ごすためには健康でなければなりません。その健康とは「心身及び社会的な存在として完全に良好な状態」をいい,単に病気でないというだけではなく,人として生きがいのある生活を営むことであろうと思います。それはWHO(世界保健機関)による健康の規定でもあります。とくに最近は,「spiritual well-being」,つまり生きがいのある人生を送ることが重視されていますので,福祉の理念と完全に重なっています。このように,ただ長く生きればよいというのではなく,人としての実存的ないのちを輝かせながら,生涯を幸せに生きることが健康と福祉に共通する究極の目標なのです。
 私が理事長を務める日本精神神経学会は,昨年8月に「第12回世界精神医学会」を横浜で開催しました。アジアで初めての世界精神医学会でしたから,東洋の精神医学とはどのようなものかと世界各国からたくさんの方がお見えになりました。その基本テーマは「Partnership for Mental Health—手をつなごう,こころの世紀に」でした。精神科医だけがこころの問題を扱うのでは限界がありますから,関係する多くの専門領域の方々が手をつなぎ,人々の心の健康のために尽くそうというものです。「21世紀はこころの世紀」と精神医学では謳っていますが,それは社会福祉にも当てはまります。障害を持たない人のこころの健康はもちろんのこと,障害を持つ人のこころの健康が社会福祉の一大テーマであることはいうまでもありません。そこには精神医学と社会福祉,とくに精神保健福祉との共通した課題があるはずです。ここでは「身体のいのち」ではなく,「こころのいのち」,社会的あるいは実存的な人間のいのちに焦点を当てながら話を進めたいと思います。

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