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VOL.54 SEPTEMBER 2008

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[福祉法学] 福祉法学のスクーリングを終えて

准教授 菅原 好秀

 福祉法学を受講しました,仙台会場?札幌会場?盛岡会場?新潟会場?東京会場の皆さん,大変お疲れ様でした。板書の量に驚かれた方も多いと思いますが,ひとりも居眠りをした方がいない,とのことでしたので,かなり脳が活性化したのではないかと思います。
 さて,講義では,憲法?民法?行政法,そして更生保護制度を具体的な事例を挙げて講義をさせていただきました。通常は,この科目をマスターするためには,法学部の学生が4年かけて学ぶところを3日間,12コマでマスターすることは,かなり大変であったと思います。
 現在,社会福祉士養成課程における教育内容等の見直し案が検討されており,法学の名称が「権利擁護と成年後見制度」「更生保護制度」になる予定です。現在の社会福祉専門職における相談援助業務は複雑?多岐にわたっています。利用者から法律の相談を受けたときに,「私より法律の専門家に聞いてください」という返答では困る,ということを意味していると思います。確かに,社会福祉専門職のための法学は,弁護士などの法律の専門知識までは要求されていません。ただ,今回の社会福祉士養成課程の教育内容の見直し案には,「当該担当者への橋渡し」「総合的かつ包括的に援助していく役割」「ネットワークの形成を図る」ことが明記されています。
 このことは,福祉課題を抱えた利用者からの相談に対しては,専門領域外であったとしても,たらいまわしにせず,必要としている担当者までコーディネートし,または,その担当者を探し出し,その担当者とネットワークを形成して,総合的かつ包括的に利用者に援助することが,社会福祉専門職に求められている,ということです。そのためには,法律家のような専門的な高度な知識の修得を目的とするのではなく,どの法律に何がかかれていて,どのような意義があるのか,という最低限の法学の知識が求められている,ということです。社会福祉専門職として要求される幅広い法学の知識の活用が今後,期待されていることを意味しています。
 次に法学のレポートについてですが,法学は,基本的には,条文の制度趣旨,次に判例が365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@な位置を占めています。特に判例は,裁判官が当該事案の事実認定をするために,通常は1年以上,弁護士や検察官との弁論過程や証人による証人尋問の過程を通じて,裁判官が精査し,裁判官の良心と経験と過去の判例(先例)と社会通念にしたがって,当該事案に対して心証形成し,複数の裁判官の合議制によって判決を下しています。日本国憲法が改正され,又は社会情勢が大きく変化する場合を除いて,一度判決が下されると,今後の同種類型の事案に対しては,当該事案に関する訴訟関係者及び社会全体を拘束します。この判例の見解について自分の考えを論じることが大切です。
 最後に,大学で学ぶ意義は,正解が用意されている受験勉強とは異なり,自ら課題を発見し,考察の仕方を自分で探る過程にあります。インターネットの検索サイトで内容をコピー?貼り付け(いわゆるコピペ)して課題を終了することは,学問を探求することとは大きく異なります。図書館で関係する何冊もの文献を探し,熟慮に熟慮を重ねたレポートは実に生き生きしています。このようなレポートは,「ここまで,文献を調べました。大変でしたが,でも,ここまでやり遂げました。このレポートを是非見てください」という思いがレポート全体に満ち溢れています。
 世の中には,本当の救済を求めている人たちはたくさんいます。大学で学んだことを駆使して,説得力と思いやりをもち,相手の立場を理解できる大きさを兼ね備えた意義を学ぶ知的空間が大学であり,その知的空間で仕事をしながら,社会の人びとを幸せにするために,努力している皆さんのお役に立てることが私の価値ある使命であると考えています。
 皆さんの更なる発展を祈念しております。

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