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VOL.23 NOVEMBER 2004

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[福祉心理学]
福祉心理学のレポートを添削して
──「福祉心理学」における「福祉」と「心理」の二面性について──

助教授
渡部 純夫

◆1 はじめに

 「福祉心理学」のレポートを添削していて気づくことのひとつとして,「社会福祉」と「福祉心理」の関係をどのように扱ってよいのかに困っている方を時々見かけます。「福祉心理学」が「福祉」と「心理学」の2つの世界を取りこんでいるところからきているのかもしれません。今回は,「福祉心理学」のレポートを書くにあたって,「福祉」と「心理」をどのように考えていけばよいのかについて考え,「福祉心理学」の姿に少しでも近づければと思います。

◆2 社会福祉の二面性について

 「福祉心理学」の構築を前提に,「福祉心理」を考えると必ず「社会福祉」の領域を考えなくてはならなくなります。「社会福祉」を詳しく語る資格も能力もあるわけではないのですが,大きく分けて考えてみると,2つに分かれるのではないかと思われます。
 1つは,法律や制度の面から考えることができます。法律や制度を時代や文化?社会システムに適合するように整備?拡充を行い,それを適切に活用する「制度的福祉」の側面を考えることができます。
 2つには,福祉の対象となる人?家族?地域などに直接かかわり,成果をあげる「臨床的福祉」の側面であります。
 「福祉心理」は主として「臨床的福祉」に関する専門性を用い,高いレベルの心理学的な知識と技術を必要とするものであると考えられます。ですから,レポートを書くにあたっては「臨床的福祉」の視点をしっかり持って分析?考察を行っていただきたいと思います。

◆3 福祉心理の二面性について

 「福祉心理」の活用という点から考えてみますと,ここにも二面性を見ることができます。
 1つには,臨床心理の専門職が福祉の実践の場で,心理学(特に臨床心理学を中心に)の知識とスキルを用いることが考えられます。もう1つは,いわゆる社会福祉の専門職が福祉の実践の場で,対象となる人?家族?地域などの心理的側面に配慮して実践を進める場合が考えられます。
 どの立場に立って「福祉心理」を考えるかで,自ずととらえ方が違ってきます。レポートを書くときに,どちらのスタンスで「福祉心理」を考えているのかを明確にしながら展開のまとめを行うようにしていただきたいと思います。
 今後の方向性としては,この二面性を統合していくことで「福祉心理学」の構築が進んでいくものと思われます。
 ただ,社会福祉の実践の場では,大学などで社会福祉を学んだ人に限らず,心理学,教育学,社会学,保育学,看護学など様々な学問を学び仕事をしているという背景があります。したがって,心理学の知識とスキルのレベルは多用です。それは皆さん方も同じだと思います。目指すものとしては,当面「臨床心理に強い福祉専門職」か「社会福祉に強い心理専門職」を頭に描きながらレポートの作成を行っていただきたいと思います。

◆4 学問的関連性について

 社会福祉の実践場面において,「福祉心理学」は関連領域の学問的知見の恩恵にあずかっています。「社会福祉学」をはじめ「医学」「介護学」「家政学」「看護学」「法学」など数え上げれば際限がないほどです。そのことは,皆さんがレポートを書くにあたって気づかれることだろうと思います。「福祉心理学」の基本である「心理学」について考えてみますと,最も核になるものは臨床心理学だろうと思います。学問として「臨床心理学」が,「福祉心理学」の領域を包む形になっており,さらに実践ということから,細かくいろいろな実践領域(「児童福祉」「障がい福祉」「高齢者福祉」など)に分かれていくものと考えられます。
 「福祉心理学」の歴史は始まったばかりといっても過言ではないと思います。少しずつ理論と実践の統合をはかりながら前進していくものと考えられます。
 レポートを書くにあたっては,将来の「福祉心理学」の姿を考えるという視点もいれていただきたいと思います。専門書をただ写すだけのレポートではなく,理論的裏付けのもと自分の考えを入れたレポートにしていただきたいと思います。
 最後に,皆さんの健康を祈り,がんばりに期待しています。

引用?参考文献
園山繁樹「福祉心理の専門性としてのスキル」 第二回福祉心理学会シンポジウム

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