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VOL.23 NOVEMBER 2004

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【シリーズ?現場実習】

精神障害者通所授産施設で実習をして

福祉心理学科(通学課程)4年
佐々木さん

 今年6月に本学?通学課程で,精神保健福祉士受験資格取得に必要な「精神保健福祉援助実習」を終えられた佐々木さんにお話をお伺いしました。

Q 大学に入学して,体験学習までに精神障害者と接した経験はありましたか。
A まず,ボランティアで大学の近くの授産施設に行きました。利用者の方といっしょに作業をしたり,話しをしたりしています。これは,4年生のいまも続けています。
 また,2年生のときに,地元の北関東の精神病院で,自ら希望して2週間の実習をさせてもらいました。受け入れは,就職部にあるOBの名簿で,地元の施設にいるOBに電話して,承諾をもらいました。

Q 授産施設は症状も落ち着いている人が多いと思いますが,病院は結構症状の重い方もいらっしゃり,大変そうなイメージがあるのですが……。
A 症状が重い「急性期」病棟に入院されている患者さんでも,コミュニケーションはとれる方が多かったです。ただ,ふつうにお話ししている際に,突然「いま,あなた,私のうわさ話したでしょ」などと言われたりすることもありました。幻聴の症状だったのかな,と思います。
 「急性期」の病棟は,建物にかぎがかかっていて,病棟から外には出られないようになっていました。「急性期」より落ち着いている「安定期」病棟の方は,自由に院外外出も可で,敷地内で畑仕事をしたり,外の作業所に通っておられる方もいました。
 あと通院の「精神科デイケア」の様子も見ることができました。
 なお「急性期」より症状の重い人は「保護室」に隔離されていました。「保護室」には,ひとりになりたいから入るという方もいるようでした。

Q 2年生の時に積極的に福祉?医療の現場を見られたようですが,どうでしたか。
A 精神病院や授産施設がどういうところかを肌で感じることができました。専門的なことを本格的に学ぶ前に,「体感」したという感じでしょうか。作業プログラムに参加させていただいて,病棟患者の話を聞いたり,職員の方々の動きを観察させていただいたりした経験は,とてもよかったと感じています。

Q 体験学習先はどうやってみつけましたか。
A 地元の北関東で。実家の近くの精神病院で行いました。希望実習を行った病院とは,違うところです。3年生の7月はじめに電話で依頼し,8月に4日間の体験学習を行いました。なんと,その病院は実習生の受け入れははじめてだったそうです。事前訪問はなしの予定でしたが,前日に電話がかかってきて,打合せに出向いたのを覚えています。

Q 体験学習先ではどのようなことを経験しましたか。
A 病棟で入院患者さんと話をしたり,空いた時間を見つけてケースワーカーの人と話をしました。また,自分なりにやってみたいことを体験学習の目標としてあげましたが,「面接の場に立ち会いたい」ということを出したのが聞き入れられて,はじめて外来された方への医師の面接診療や,その後のケースワーカーの方と患者さんの相談場面を見学することができました。
 面接場面への立会いは,プライバシーの問題やインフォームド?コンセントの点で,本人や家族の人の同意が得られることは難しいようですので,とてもよい経験をさせていただきました。

Q 体験学習の4日間,どのようなことを感じましたか。
A もう少し長くやってみたいと感じました。患者さんと信頼関係をきずくというところまではいかなかったので,そうしたいと強く感じました。あと,2年生のときに行った病院とは,雰囲気がずいぶん違うなあ,と感じました。外から来る人に慣れていないのか,話もはずまず,「天気がいいですね」「そうですね」で終わってしまうような感じでした。また,ぼーっとしている人や,ひとりで新聞読んだりしている人も多かったですが,野球の話しやその人の過去の経験の話しで,少しずつ会話ができた感じでした。

Q 通学課程では,3年次までにPSW取得に必要な全科目の単位修得済みが条件のようですが,これは大変でしたか。
A はい。1科目も落とせないので,かなり頑張らないといけなかったです。

Q 4年次の現場実習先はどこでしたか。
A 精神病院希望でしたが,仙台の「通所授産施設」で行うことが,3年生の冬に決まりました。

Q 実習準備はどのようなことをしましたか。
A まず,(1)「事前学習の手引き」にもとづいて,その施設の法的根拠や利用者が使いそうな法律?制度をまとめて勉強しました。障害年金や障害者手帳,地域生活権利擁護事業,生活保護,通院医療費公費負担制度などなど。
 また,(2)行く施設のホームページをすみからすみまで読んだり,どういう利用者がいるかを仙台市の「はあとぺーじ」(http://www.city.sendai.jp/kenkou/shougai/heartpage/index.html)で調べました。あと,施設のあるところは土地勘がなかったので下見にも行きました。
 それから(3)実習計画を前?中?後期に分けて立てました。後期のことはなかなか見えないけど,私の場合は体験学習でできなかった「信頼関係をきずいた上で,その人に面接のようなことをしてみたい」と仮に立てました。なぜその施設で実習をするのか,なども改めて考えてまとめました。
 あとは(4)4週間の実習になるので,体調管理につとめました。

Q 実習計画は,受け入れの施設とも相談するんでしたっけ。
A はい。まずゼミの志村先生に何度か見せた後,実習前に受け入れ先の施設に「事前訪問」(1回のみ)を行った際に,実習担当の方と相談しました。残念ながら「面接」のようなことは,プライバシーの観点から不許可になり,面接への同席もできませんでした。

Q 4週間の「精神保健福祉援助実習」で行ったこと教えてください。
A 「授産施設」なので下請け作業を利用者の方と一緒にやっていました。また,3週目は実習生の交換で精神病院に行かせてもらい,入院希望者へのインテーク面接(はじめての面接)に同席することもできました。「面接記録の書き方」などもそこで学習できました。また,週末は同一法人の「地域生活支援センター」に来る利用者と接することもできました。5/30?6/27の間に24日の実習を行いました。

Q 利用者と接してどんなことを感じましたか。
A 最初の2,3日は緊張していてかつ作業の納期が迫っていたこともあり,作業を黙々としていました。コミュニケーションのきっかけがつかみにくかったこともあります。
 「利用者さんと話せない」と悩みましたが「何がダメなんだろう」と考え直して,(1)職員の方がどのように利用者に接しているのか,(2)利用者同士が何を話しているのかを観察することにしました。そして,作業に関する話──例えば「今日は何個できた」とか「たまったお金でどこに行きたいか」など──から入っていきました。

Q 職員の方と接して,どんなことを感じましたか。
A 実習担当者の方が毎日「反省の時間」を設けてくれて,自分を振り返るとてもよい機会となりました。たとえば,「なぜその人にかかわりたいのかという目的を意識した方がよいのではないか」とか「ただコミュニケーションをとるのでなくて,その人から何を引き出したいのかとか自分が何を感じとるのか意識してほしい」というような指摘を受けました。

Q 家族や友達とのコミュニケーションはあまり目的とか考えないで行っているように思いますが,それでは不十分な点があるということですか。
A はい。日常会話の中でも意識的にかかわっていかないと,利用者のサインを見逃すことがあるということだと思います。

Q 利用者が出す「サイン」ってどんなものなのでしょうか。
A 疲れていると仕事のペースが落ち,会話ものらないとか,悩みを抱えている素振りということだと思います。利用者のそのようなサインに気づくことが,例えば病気の再発を防いだり,早めの問題解決につながります。それは社会復帰施設で働く精神保健福祉士として大事なことだと感じました。

Q 他に社会復帰施設の「精神保健福祉士」を見られてどう思いましたか。
A 地域で生活している人を相手にしているので,利用者さんと非常に近いところにいるな,と感じました。施設全体で利用者を支えるという感じでした。また,仕事を見つけるために外部の方と連絡を常にとっておられるな,と感じました。

Q 実習中,何かつらい思いをしたことはありますか。
A 私の作業のやり方について,利用者から強い口調で怒られたときに動揺したり,失礼なことを言われたりしたときに,つづけてコミュニケーションがとれなくなったりしたことがありました。
 ただ,それも職員の方に「動揺したことは人間なんだから仕方ない」と言われて,ホッとしました。さらに,なぜ怒られてショックだったのか考えてみると,自分のこれまでの人生であまり怒られてこなかったというようなことにも気づきました。結果的に実習は「これを言ったら間違いなのではないか」というような自分の思考のクセを知ったり,自分を知るという自己覚知のよい機会になりました。

Q 大学で学んだ援助技術などとの関連を考えさせられる機会はありましたか。
A 職員の方は,教科書に載っている援助技術をごく自然に行っておられると思いました。話を聴く際にも,意図的に「受容」「共感」を行ってるという感じではなく,ごく自然にされてるようでした。また,利用者の「自己決定」ということでも,利用者からの相談の際に「?したらいい」というふうに答えを出すのではなく,「あなたならどうしたいと思いますか」と聞き返していたのが印象に残りました。

Q その他,実習で感じたことをお話ください。
A 実習担当者の方が,おもしろがって私の経験や感想を聞いてくれて,それに対していろいろな課題を投げかけてくれたことが,大変勉強になりました。たとえば授産施設に通っている方には,就職して「社会復帰」というケースはなかなかありません。そのことについての疑問を口にすると「そもそも社会復帰って何だろう」「そんなに社会復帰って大事なんだろうか」と問い返されました。教科書では「社会復帰=いいこと」のように学びましたが,「その人にとってどういう状態が本当にいいのだろうか」というようなことを考えさせられました。これからも考えていきたいテーマだと思っています。

 実習担当者にもめぐまれ,とてもよい実習経験をされたようですね。長い時間,ありがとうございました。

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