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VOL.23 NOVEMBER 2004

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[臨床心理学] 平成16年度夏期スクーリングを終えて

助教授
佐々木 千鶴子

 今年度で,2回目のスクーリングを担当しました。さまざまな思い出が今年もできました。ところで,まず今回は,私自身の学生時代のスクーリングの思い出を少し語りたいと思います。いくつかの思い出深い授業がありますが,なかでも,第二外国語の中国語には苦労しました。試験は当てられた部分を数行だけ音読するものでしたが,今でもその課題文の出だしは記憶に残っています。一番冷や汗をかいた授業でした。大変興味深かったのは,生物の実験でした。団子虫の実験と魚の鱗(うろこ)の実験だったのですが,夢中になって課題を考え,レポートを書いた覚えがあります。それまで体験したことのない新鮮な感動がありました。
 当時の大学の授業は,一般教養という科目がありました。概論的な内容とはいうものの,先生の得意分野の話が中心で,他では聴けないものとして興味深く感じられました。心に残っている先生方の言葉もいくつかあります。なかでも「教えられたことが何を前提として考えられているかを考えて,その前提を疑うところから,自分の本当の学問がはじまる」という言葉は,その後の私に大きな影響を与えてきたと思います。
 真夏の東京,クーラーもない大教室での授業がほとんどでしたが,学べることがうれしくて,暑さはほとんど気になりませんでした。大変だったのは,やはり試験です。答案は全てペン書きでしたので,当時修正液の存在を知らなかった私は,全神経を集中させてがんばりました。あれは,瞬時の集中力をつけるためのトレーニングになったと思います。

 さて,今回のスクーリングでは,いったいどんな思い出が残ったでしょうか。今回,私は大きな失敗を二つしました。ひとつはパソコンとプロジェクターの接続をしないまま,「映らない!!」とモタモタしてしまったことです。でも,このときは疾風のように職員の方が階段教室を駆け降りてきて,また,学科から他の先生にわざわざ来ていただいて……,にこやかにコードを接続してくれました。「今年の臨床心理学の夏期スクーリングの思い出は,授業の内容ではなく,この光景だろうなあ……」と,苦笑いでした。
 もうひとつの大きな失敗は,皆さんの感想のなかに指摘がありましたが「大事なところはチェックしてください,と言いますから,スライドを書き写さなくてもいいです」と言っておきながら,「チェックしてください」という文字通りのことばで言明しなかったことです。これは,大変申し訳なかったと思っています。私としては,試験対策のためという点では出題範囲もかなり限定して初日に指摘しておきましたし,講義のなかで繰り返し話題にした点をしっかり聞いておいていただければ,スライドを全部ノートしなくても,試験に関しては大丈夫なのではないかと判断しておりました。
 ちなみに,テキストからの試験問題はできるだけ講義に重なる部分を選択し,範囲を限定したつもりでした。主に講義内容だけからの出題は2題だったのですが,そのうちの1題は,【問題1】にヒントになる問いを入れてありました。また,採点は穴埋め式の方も記述式の方も,私としてはかなり幅広い回答を許容したつもりです。その点はご理解いただきたいところです。
 それから,講義はテキストを通読していることを前提に行っています。昨年はそのように事前に指示し,今年も昨年同様そのように連絡をしておいたと思ったのですが,事務処理の段階で行き違いがあったのでしょうか。そうした指示もなかったというご批判をいただいております。もし,そうした記載が漏れていたとしましたら,その点も申しわけなく思いますが,同時に主体的に学ぶ姿勢を期待します。
 ところで,皆さんのスクーリングの感想のなかに「働きながら,お金と時間をかけて来ているのです」という声も多く寄せられていました。そうした方々の姿には,過去の自分を見る思いがします。私自身,働きながら,子育てをしながら一心不乱にスクーリングを受けていた日々を懐しく思い出します。交通費を気にしながら通った図書館。お金がないので,いつも同じトレーナーとジーンズとスニーカー──およそ「遊び」とは縁遠い通教生時代の4年半でした。その時期の流行に関する記憶がほとんどないくらい,わずかな自分の時間は,いつも勉強一色でした。自宅のトイレ,台所,風呂場にまで,いたるところにテキストやメモが置かれていました。ビニールに包んだ風呂場のテキストなど,今となっては笑い話ですが,当時の私にとって,大学の通信教育は最後の学びのチャンスであり,単位は絶対に落としてはならないものであり,強い緊張感のもとに勉強していたと思います。単にタイムリミットを自分で自分に課していただけのことなのですが。

 さて,臨床心理学は今,幅広い層の方に関心を寄せていただいております。その点については、大変ありがたいことだと感じています。一方,関心の的となっている臨床心理学はまだまだ若い学問であり,あくまでも心理学の応用分野のひとつです。こなれていない部分も多いのが実情です。また,応用というのはかなり偏った分野ということにもなります。
 そうした意味では,大学における学びとはある種の偏りに触れることでもあるだろうと思います。団子虫と魚の鱗の実験が,いったい私にとって何の役にたったかはわかりませんが,他では体験できない学びの機会がそこにはあったと思います。私自身の授業も,そのようなものを目指してはいますが,いっそうの工夫と努力が必要なのだろうと思っています。

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