With TOP > VOL.35 MAY 2006 > 

VOL.35 MAY 2006

【学習サポート】

【卒業者からのメッセージ】

【現場から現場へ】

【6月科目修了試験のご案内】

【夏期スクーリングI?IIのご案内】

【通信制大学院コーナー】

【お知らせ】

【卒業と資格?免許状取得のために】

【卒業者アンケート】

【ひろば】

【卒業者からのメッセージ】

卒業研究の結果報告と御礼

福祉心理学科 Y.F.

 ようやく暖かい日が続くようになりました。皆様,いかがお過ごしでしょうか。
 さて,昨年の夏期スクーリングにおきましては「心理学実験」などを受講しておられた多くの方々に調査のご協力をいただき,無事に卒業研究を書き終えることができました。皆様のご協力に対し,心より御礼申し上げますと同時に,簡単ですが結果の報告をさせていただきます。
 卒業研究の論題は「非合理的なものへの関心と精神的健康との関連」でした。
 研究の目的は,科学的合理主義が隆盛な現代にあって,霊魂,迷信,占い,超常力,異次元など非合理的なものへ関心を寄せることが我々の精神生活にどう影響しているのかを検討することでした。ともすれば「馬鹿げている」と言われがちなこれらのものへ関心が強い人は,現実適応が悪く精神的健康を損ねているかもしれないという予測をもとに検討を進めました。それとも何らかの恩恵にあずかっているのでしょうか……。
 分析の結果,非合理信念には精神的健康を損ねる要素が確かに含まれており,例えば,不安との関連が見られました。ただし,多くの場合,今回採用しなかった変数の影響も十分想定されたため,非合理信念そのものが直接的に精神的健康を害すものであると断定するには至りませんでした。一方で,肯定的な役割も示唆されました。特に,困難事態で積極的な対処行動をとらせる可能性が見られました。
 こうしてみると,非合理信念をもつことは,一般に言われるように,客観性に乏しい,人生に消極的,騙されやすい等の負の側面がありながらも,むしろ個人的な世界観であるという側面が強いのではないかと思われます。世界観であるとすると,正負両面が現れるのもうなずけます。肯定面をうかがわせる他の例としては,自尊感情が高い人々の中にも非合理信念を強くもつ人が含まれていたということをあげられます。とはいえ,合理的思考が優勢な現代になじみにくい世界観は時に非適応的に働くのでしょう。今回の結果では,現実感覚が希薄で,非合理的な世界が単なる逃避先となっているのではないかと想像されるような場合には精神的健康を損なう傾向がうかがえました。逆にいえば,もし,現実の生活との繋がりを断ち切らないのであれば,非合理信念が自尊感情を支え,人生のさまざまな局面において,その人なりの意味を構築する助けになる可能性を残しているとも思われます。
 今回,研究技術の未熟さもあり,現代における非合理的なものとは何なのかを描ききることができませんでしたが,その中でも,非合理信念の持つ肯定的な役割が示唆されたことは興味深いものでした。非合理信念が肯定的世界観となるとすれば,それは「非合理的」な世界を「合理的」な頑さをもって信じるという矛盾を犯さず,非合理的な幅広さをもってコミットした時であり,最も効力を発揮する時なのかもしれません。
 最後に,ご協力本当にありがとうございました。

1つ前のページへこのページの先頭へ