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VOL.18 APRIL 2004

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[社会教育学科] 学びを支える社会教育

社会教育学科
星山 幸男

◆生涯学習と社会教育

 「生涯学習の時代」という言葉をよく耳にします。また,「生涯学習をしている」などということもあります。しかし,生涯学習とはいったい何なのか,生涯教育とどこが違い,社会教育はそれらとどのような関係にあるのかという点については,案外知られていません。
 1965年パリで開かれたユネスコ「成人教育推進国際委員会」の席で,P.ラングランによって提唱された「生涯教育」の理念は,世界的に大きな反響を呼び,70年代初めにはわが国にも紹介されました。当時はすぐに受け入れられませんでしたが,80年代半ば以降になって急速に注目されるようになります。そしてその頃から生涯教育ではなく生涯学習という言い方が多く使われるようになりました。しかし,わが国で政策として広く使われるようになってからも,生涯学習のはっきりした定義は示されず,90年に制定された「生涯学習振興整備法」のなかでも何を指して生涯学習というのか,述べられてはいません。にもかかわらず,各自治体教育委員会の「社会教育課」が,次々と「生涯学習課」に名称変更されていきました。こうして,生涯学習は社会教育とほぼ同じ意味だという誤解と混乱を招くことになったのですが,実は社会教育課が生涯学習課となっただけで学校教育課と並置されている状況は,ラングランの提唱した生涯教育の考え方からすると,まことに奇妙なものといわざるをえないのです。
 社会教育学科に入られた皆さんは,まずラングランの提唱した生涯教育の考え方を,是非正確に理解してほしいと思います。彼は大変大きな教育の枠組み?改革の方向を提唱しています。ですから,ここを出発点として,社会教育の役割やあり方を学び,生涯学習の今後の進め方を考えていくことが大切なのです。

◆地域づくりと学習

 今,地方分権化が叫ばれ,行財政改革や住民参画によるまちづくりが進められています。地方自治を行政に任せ切りにせず,住民と行政が一体となったまちづくりを重視し,地域を担う人材の育成が強く求められているのです。よく「まちづくりは人づくり」といわれますが,これからの地方自治は,団体自治の再編強化と同時に,住民自治を担う人をどう育てるかが大きな課題となっています。具体的にお話しましょう。各地域で趣味?スポーツ?ボランティアなどさまざまなグループ活動やNPO活動が活発に展開されているのは,ご存知の通りです。これらの活動の過程,つまり試行錯誤しながら活動を行っていくこと自体が「学び」といえます。また,活動のなかで協同して地域課題に向き合うとき,課題解決のための「学び」も不可欠となります。地域に学び,学習を重ねながら問題を乗り越え,住みよい地域を築いていく時,「学び」を通して住民の自治能力は育まれていきます。これこそまさに生涯学習といえるでしょう。
 現在各地で市町村合併が半ば強引に進められようとしていますが,自治体が広域化するほど,自分達が求める地域生活を作っていくために小範域での住民の自治が365体育投注_365体育备用网址-【唯一授权牌照】@となります。つまり自治を育み支える学習は,これからの時代のキーワードなのです。

◆高まる社会教育への期待

 福祉の大学になぜ社会教育学科があるの? そう思われた方もおられるでしょう。今日の福祉の考え方は,生きるうえで援助を必要とする人々に社会的支援を行うのはもちろんですが,誰もが一緒により充実した生活を送るための支援を行うことと捉えています。この考えに立てば,皆がより自分らしく生活できる地域社会を築いていくための活動に必要な学習を支援していくことも,広い意味で福祉の一貫と捉えることができます。
 社会教育は,諸個人の学習要求を満たすための教育活動ですが,また上で述べたような地域を担う人を育むための学習を支援していく教育活動でもあります。子どもから高齢者まで地域に住む人すべてがその対象となり,学習支援活動はさまざまな形態で実施されています。従来から行われている講座や教室の開設,スポーツ?文化イベントの企画?開催,図書や諸資料の提供などに留まらず,人々が自発的?自主的に活動していくなかで生まれる学習ニーズにいろいろな方法で応えていくことが求められています。また,子どもたちを取り巻く環境の変化に伴う成長?発達の問題や学校の問題が山積するなかで,広い視野から子どもの学びの場を提供することも社会教育に期待されています。
 こうした社会教育を担っている専門的職員として,社会教育主事?公民館主事?図書館司書?博物館学芸員?少年自然の家や青年の家の専門指導員などがあり,これらの職員は学習者と共に「学び」をつくっていくことが仕事です。しかし,社会教育の担い手は職員だけではなく,そこに住む人々すべてです。あなた自身が自己実現を図り,自らの暮らしを拓いていくことができるために,社会教育の意義や実践の方法をこの学科で楽しく学んで下さい。

■参考図書
 ポール?ラングラン著,波多野完治訳『生涯教育入門 第一部』 財団法人全日本社会教育連合会,1971年

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